全ノミネート作品を見た筆者が2018年アカデミー賞を大胆予想してみた!-ノミネート作品とオスカーの行方とは!?
こんちくわ!Shygonです!
なぜ最近更新頻度が高いのか、、、
それはついにやってきましたよ!!!
今年も3月4日夜(アメリカ時間)に一年に一回の「世界最大の映画の祭典」、
そして筆者の世界で一番好きな日である
第90回アカデミー賞受賞式
候補作は数千あると言われる中で、見事勝ち残ってきたノミネートされた作品中でも「最高の一本」を決める日、それがアカデミー賞です。
そのノミネート作品実はほとんど日本では授賞式前に公開しないんですよね。
だから幸運にも本場アメリカにいる筆者が大胆予想するため、多くの人にノミネート作品を知ってほしいという思いで、書きまくりました!!!
しかし、アカデミー賞はただ面白い作品だけが受賞するとは限らないのです。
その年により、「年の色」があります。
前回第89回は多くの人が人種差別に異議を唱えました。その結果史上初のキャストがほぼ黒人映画「ムーンライト」が作品賞に輝いたのは記憶に新しいことでしょう。
そして今年です。今年は言うまでもなく#METOOです。
去年の夏ごろ大物プロデューサー、ハーベイワインスタインが長年のセクハラがリークされ、多くの女性が私も被害者と名乗り上げるなど事態は思わぬ方向に動きました。
そんな事態を受け、多くの大物がセクハラで訴えられ、作品の降板を余儀なくされるなど大きな事件へと発展します。
そんな女性の権利を主張す映画が受賞確立が高いといわれていますが、ほとんどのノミネート作品をみた筆者が今年も大胆予想します。
ちなみに去年は主要部門百発百中という結果を残しましたが、今年はどうでしょうか。
一応当日までは何度が編集を加えるかもしれませんが、それ以後は残しておこうと思います。
ノミネートを予想するにあたり、誰が受賞する確率が高いか、筆者の好みと思い、最後に最終決断と3つのカテゴリーに分けてご説明します。
※なお、短編映画、短編ドキュメンタリー、長編ドキュメンタリー、短編アニメ、そして外国語映画賞に関してはノミネート作品を見ていないので、除外します。
※本ブログでご紹介している映画は名前の横に※を付けておきます。一番下に全てまとめてリンクを貼っておくので是非見てください!!!
長編アニメ賞
「ボス・ベイビー」
「the Breadwinner」
「Fredinard」
「リメンバー・ミー」※
「ゴッホ・最後の手紙」
予想:「リメンバー・ミー」※
このカテゴリーに関しては圧倒的に「リメンバー・ミー」が群を抜いていて、ほぼ確実に決まりです。本作は「ピクサースタジオ史上最高の良作」と言われるほど批評面、興行成績がほかの候補と比べてもダントツです!
作曲賞
「ダンケルク」
「シェイプオブウォーター」※
「スリービルボード」※
「ファントムスレッド」
「スターウォーズ / 最後のジェダイ」
予想:「シェイプオブウォーター」※
「ダンケルク」と「シェイプオブウォーター」の決戦になると思われます。僕個人としては「ファントムスレッド」も譲れないところですが、怪獣映画を見事にこれまでにない傑作に仕立て上げた作曲家アレクサンドラ・デスプラに受賞してほしいものです。
歌曲賞(主題歌賞)
‘Mystery of Love’, from 「君の名前で僕を呼んで」※
‘Stand up for something’, from 「マーシャル 法廷を変えた男」
‘Mighty River’, from 「マッドバウンド 哀しき友情」※
‘Remember me’, from 「リメンバー・ミー」※
‘This is me’, from 「グレイテスト・ショーマン」※
予想:’Might River’ from「マッドバウンド」※
ここはかなり難しいですね。各メディアでは「マッドバウンド」, 「リメンバー・ミー」, 「君の名前で僕を呼んで」の混戦状態です。「君の名前で僕を呼んで」は間違いなく良作で他のカテゴリーでも評価されており、「リメンバー・ミー」はピクサースタジオ史上最高傑作と言われており、長編アニメーション賞はほぼ確実に本作が取ります。その作品は音楽がテーマであり、アニメーションの2部門受賞も十分あり得るといったところでしょう。しかし、僕は「マッドバウンド」ではないかと思います。その理由は2つあります。まずは ‘Might River’ を歌ってるメアリー・J・ブランジは既に名の知れた有名な歌手であり、本作に俳優としても出演し、見事助演女優賞のカテゴリーにノミネートされています。そして、次は今年は女性がかなり賞を取るのではないかと思います(理由は上記に)。そんな2つの理由から彼女が受賞と予想します。彼女の演技は迫力がありましたが、助演女優賞の部門ではほかの強敵がいるので、そのかわりのこの部門でも受賞はあるでしょう。
ですが、「マッドバウンド」の受賞は可能性的にはかなり低いと思われます。
多くの批評家が予想として挙げているのは「リメンバー・ミー」です。この部門を「リメンバー・ミー」がもしとるとアニメーションがアカデミー賞で2部門受賞という大快挙になります。
美術賞
「美女と野獣」
「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
「ブレードランナー2049」※
「シェイプオブウォーター」※
「ダンケルク」
予想:「ブレードランナー2049」※
この部門は「シェイプオブウォーター」と「ブレードランナー2049」の争いになるでしょう。今年のアカデミー賞最大の目玉「シェイプオブウォーター」が一歩優位なもかもしれません。しかし「ブレードランナー2049」が凄すぎる。本当に「ブレードランナー」がすきな筆者にとってこんなにも続編を大成功させた理由の一つはやはりその世界観でしょう。前作の世界観を引き継ぎ、それをしっかり自ら調理してアレンジした美術班は評価されてほしいものです。かなり難しい2択にありますが、ここは可能性がなくても自分の気持ちに正直に「ブレードランナー2049」を推します!!!
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
「Victoria&Abdul」
「Wonder」
予想:「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
まわりの意見など関係ありません。このカテゴリーは100%チャーチル映画を推します。理由は明白です。担当したのが日本人メイクアップアーティスト辻一弘さんです。普段のゲイリーオールドマンの雰囲気を残したまま、全く違う人間に仕立て上げた彼の偉業は計り知れません。日本人のこのカテゴリーでの受賞は初となるので、希望をもちたいです。
音響編集賞
「ベイビードライバー」※
「ブレードランナー2049」※
「ダンケルク」
「シェイプオブウォーター」※
「スターウォーズ / 最後のジェダイ」
予想:「ダンケルク」
「ベイビードライバー」か「ダンケルク」の一騎打ちになるのではないでしょうか。どちらも批評家からの評価も高いことからどちらが受賞してもあり得る話ですが、僕は「ダンケルク」を推します!すでにご覧になった方はお判りただけると思いますが、まず臨場感がパンパないです。ノーラン監督はいつも通りCGを使わず、実際に飛行機を借りてきて飛ばすなど天才的な才能の持ち主です。戦争を全く別の角度から描き絶賛される作品に仕上がったのはまぎれもなく映画館でそんな戦争にいるような錯覚に観客が陥ってしまうような音響編集をしたおかげです。しかし、「ベイビードライバー」も可能性はあると思います。「ベイビードライバー」は音響編集の最大の章を受章しています。そして、この部門去年はまさかの「ハクソーリッジ」がサプライズ受賞しました。「ベイビードライバー」アクション映画ながらかなり評価が高いので、可能性はあるでしょう。
録音賞
「ベイビードライバー」※
「ブレードランナー2049」※
「ダンケルク」
「シェイプオブウォーター」※
「スターウォーズ / 最後のジェダイ」
予想:「ダンケルク」
まあ、ほぼ確実に「ダンケルク」です。この映画はほんとにずば抜けています。しかし、僕のお気に入り「ブレードランナー2049」は可能性あります。ここは自分の意見は殺して見守りましょう。
視聴効果賞
「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」
「ブレードランナー2049」※
「スターウォーズ / 最後のジェダイ」
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」
「キングコング:髑髏島の巨神」
予想:「ブレードランナー2049」※
ここも難しいです。「ブレードランナー2049」と「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」の一騎打ちですが、双方とも様々な映画祭で評価されています。ここはもちろん「ブレードランナー2049」に予想です、というか希望です。しかし、ここ最近になって「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」が急上昇してきたのは個人的には気に食わないですね。ほんとにここも全く予想できない部門のひとつです。
編集賞
「ブレードランナー2049」※
「ダンケルク」
「アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル」※
「シェイプオブウォーター」※
「スリービルボード」※
予想:「ダンケルク」
音響と編集はほぼ確実に「ダンケルク」だと思われます。
撮影賞
「シェイプオブウォーター」※
「ブレードランナー2049」※
「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
「ダンケルク」
「マッドバウンド 哀しき友情」※
予想:「ブレードランナー2049」※
ここも大変ですよ。普通だと「ブレードランナー2049」でしょう。しかし、不安要素があります。撮影監督がいままで14ノミネートされながらいまだ無冠のレジェンド ロジャー・ディーキンスが務めているからです。これほど世界的に名があがり、絶大的な支持を受けているのにも関わらず、アカデミー賞だけはとれないというジンクスがあります。そして、今年もしっかり英国アカデミー賞は取りました。そんなもうとれないフラグ満載の雰囲気の中、ディーキンスに勝利の女神は微笑むのでしょうか。批評家の中ではディーキンスの受賞は諦めている雰囲気なので、「シェイプオブウォーター」を推している人が多いですね。ですが、僕は彼のはじめての受賞スピーチは今年みたいです。お願いです。まじで
衣装デザイン賞
「美女と野獣」
「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
「ファントムスレッド」
「シェイプオブウォーター」※
「victoria$Abdul」
予想:「ファントムスレッド」
実は僕は「ファントムスレッド」はもうすこし評価されるべきと思っています。天才ふたりの最後の作品にふさわしい出来だと自負していたのですが、この部門の受賞はかないそうです。不安要素を挙げるとすると「シェイプオブウォーター」の受賞は可能性があると思います。
脚色賞
「モリーズ・ゲーム」
「ローガン」※
「ディザスター・アーティスト」
「君の名前で僕を呼んで」※
「マッドバウンド 哀しき友情」※
予想:「君の名前で僕を呼んで」※
もちろん、「君の名前で僕を呼んで」です。80歳を越えながら脚本をこんなに情熱的に仕上げたのはやはりジェイムス・アイボリーの実力でしょう。ほんとに熱狂できる’なにか’をこの映画から体験できたので、この作品でまず間違いないと思います。でも「マッドバウンド」の受賞も可能性あると思います。
脚本賞
「スリービルボード」※
「シェイプオブウォーター」※
「ビックシック ぼくたちの大いなる目ざめ」
「レディーバード」※
「ゲット・アウト」
予想:「ゲット・アウト」
圧倒的に「ゲット・アウト」です。アカデミー賞はあんまり名が知られないと受賞は難しいといわれていますが、脚本賞よ脚色部門だけ、特別若手の登竜門として受賞する人が多いです。本作の監督ジョーダン・ピールは本作が初監督作ながらアカデミー賞にノミネートされていることから、脚本賞の受賞は十分あり得ると思います。他に可能性があるとすれば「レディーバード」ではないでしょうか。個人的には「レディーバード」に取ってほしいですが、まずないでしょう。
番外編:なぜノミネートされない!?
ここではアカデミー賞になぜノミネート十分いされなかったのか少しブチ切れるコーナーです。
まずは「ワンダーウーマン」
一部門もノミネートされない理由がわかりません。記事にはいろいろな理由が書いてありますが、本作は女性だって映画はとれるんだぞという大々的な意思表示映画です。評価も十分高いですし、今年の「色」もどっぷりハマっているのになぞですね。差別しか考えられません。
次に「最初に父は殺された。」アンジェリーナジョリー監督の野心的な作品で、全編クメール語で描くという大胆な手法で僕のお気に入りの映画の一つです。カンボジアの大虐殺の事実を坦々と描写するのではなく、子供の目線から描いた非常に興味深い作品です。
最後は「ウィンド・リバー」
ネイティブインディアンの実情をミステリー風に仕上げた本作も埋もれた傑作の一作だと思っています。女性の失踪件数などアメリカがいままで隠してきたことが明るみになったような、そんな重要な映画だと思います
では主要部門の予想です!
助演女優賞
アリソン・ジャーニー「アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル」※
メアリー・J・ブライジ「マッドバウンド 哀しき友情」※
ローリー・メトカーフ「レディーバード」※
オクタビア・スペンサー「シェイプオブウォーター」※
レスリー・マンビル「ファントムスレッド」
予想:アリソン・ジャーニー※
この演技でとれないほうがおかしいレベルです。それほどアリソンの映画における存在感は格別で、圧倒的です。他の可能性があるとすれば、「レディーバード」のローリー・メトカーフです。思春期というたいへんな時期の娘をたくましく育てようと奮闘する彼女の姿は母親ならば間違いなく共感を呼ぶと思います。しかし、今年はアリソンが強すぎた。
助演男優賞
ウディ・ハレルソン「スリービルボード」※
ウィレム・デフォー「the Florida project」
サム・ロックウェル「スリービルボード」※
リチャード・ジェンキンス「シェイプオブウォーター」※
クリストファー・プラマー「All the Money in the world」
予想:サム・ロックウェル※
本ブログで彼の「スリービルボード」での演技をほめたたえましたが、ぜひ取ってほしいです。あの演技はもはや怪物です。あんな演技をしてアカデミー賞もらえない暁には引退したほうがいいです(笑)しかし、唯一の不安要素はウィレム・デフォーですね。今年が明けるまでは彼が賞レースでは一歩リードしている状況であり、彼の方がキャリアが長いながらいまだ受賞に至ってません。主要部門でサプライズ受賞の部門があるとすれば、ここの波乱が可能性的には高いでしょう。でもこのサム・ロックウェルはほんとに人間国宝並みの評価を受けるべきだと個人的には思います。
主演女優賞
フランシス・マクド―マンド「スリービルボード」※
メリル・ストリープ「ペンタゴン・ペーパーズ / 最高機密文書」
サリー・ホーキンス「シェイプオブウォーター」※
シアーシャ・ローナン「レディーバード」※
マーゴット・ロビー「アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル」※
予想:フランシス・マクドーマンド※
彼女の2回目の受賞が濃厚でしょう。1996年のファーゴ受賞以来20年ぶりの受賞ですね。でも個人的にはこちらの部門も少しですが、サプライズ受賞があるのではないかと踏んています。なぜなら「スリービルボード」から助演男優賞のサム・ロックウェル、主演女優賞のフランシスの同時受賞はあまり例がこれまでありません。毎年多くの予想がどこかで大きく外れますが、その災難は「スリービルボード」勢に降りかかるのではないかと密かにおもっています。なので、個人的に応援したいのはサリー・ホーキンスです。全編手話で演技してあれほど存在力を引き出すのは紛れもなく彼女の実力です。
主演男優賞
ゲイリー・オールドマン「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
ダニエル・デイ・ルイス「ファントムスレッド」
ティモシー・シャメラ「君の名前で僕を呼んで」※
ダニエル・カルーヤ「ゲット・アウト」
デンゼル・ワシントン「ローマン・J・イスラエル、エスク」
予想:ゲイリー・オールドマン
ふつうに圧倒的です。この部門ほど受賞前から決まっているカテゴリーはないです。彼の演技はいうまでもなく感動的です。名声的もばっちりでここでやっと名俳優の初受賞となります。おさきに、おめでとうございます。
監督賞
ギレルモ・デル・トロ「シェイプオブウォーター」※
クリストファー・ノーラン「ダンケルク」
グレタ・ガーウィング「レディーバード」※
ジョーダン・ピール「ゲット・アウト」
ポール・トーマス・アンダーソン「ファントムスレッド」
予想:ギレルモ・デル・トロ※
ここの部門も正直わかりません。ギレルモ・デル・トロとクリストファー・ノーランの一騎打ちなのは間違いないのですが、ギレルモ・デル・トロの想像力は度肝をいつも抜かれます。そしてこんなクレイジーな半魚人とおばさんの恋愛映画をここまでの完成度に持ってくるのは凄すぎます。映画オタクのギレルモ・デル・トロの人生を賭けたといっても過言ではない本作。クリストファー・ノーランに関してはこの人を超える天才監督(同賞ノミネートされているポールトーマスアンダーソンもそのひとりだと思うが)はこの世にいないので、今度の機会にしてほしいです。映画オタクのかすかな願いを潰さないでほしい、そんな願いでギレルモ・デル・トロにとってほしいです。
作品賞
「スリービルボード」※
「シェイプオブウォーター」※
「ゲット・アウト」
「レディーバード」※
「ダンケルク」
「ファントムスレッド」
「君の名前で僕を呼んで」※
「ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男」
「ペンタゴン・ペーパーズ / 最高機密文書」
予想:「スリービルボード」※
アカデミー賞の大本命である作品賞。「スリービルボード」はゴールデングローブ賞を最多4部門受賞しています。そして、今年の大注目「シェイプオブウォーター」、衝撃のデビュー作「ゲット・アウト」、新たな視点からの戦争映画「ダンケルク」、映画サイトrottentomatosでは史上最高のレビューを獲得した「レディーバード」が一歩リードした形になっています。「スリービルボード」みたいなのはアカデミー賞が一番好む作品けいたいですから、一番可能性はあります。ですが、人生欠けて作った変態半魚人映画を作ったギレルモ・デル・トロ監督の笑顔をみたいですね。でも、やっぱり女性監督のスピーチもみたい。。。もうわかりません。無理です、予想するのは。でも自分が一番とってほしい人はギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプオブウォーター」です。でも直観ですが「スリービルボード」な気がします。この部類の映画はアカデミー賞では非常に好まれる、そして本作で訴えていることが今年の「色」に丸被り。そんな理由から「スリービルボード」のような気がします。一部「ゲット・アウト」支持の人たちがいますが、「ゲット・アウト」がとるようなことがあれば、そんな新しい映画界に興味がわきますね!
特に歌曲賞、美術賞、撮影賞に関してはダメもとの予想なので、軌跡が起こることを願う限りです。毎年どんなアカデミー賞オタクでも外すくらい予想が難しいですが、自分なりにShygonが予想した結果です。
最後に※のついている映画に関しては記事にして解説しているのでぜひお読みください!
びぇ!
映画「アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル」 感想ネタバレ:栄光と転落のスケート選手の壮絶な伝記ドラマ
こんちくわ!Shygonです!
今回はアメリカのフィギュアスケート界最大のスキャンダル、通称「ナンシーケリガン襲撃事件」に関わったとされるトーニャ・ハーディングの半生を扱った映画
「アイ, トーニャ/ 史上最大のスキャンダル」
を熱く語ります。
1990年代初頭、女子フィギュアスケート界はオリンピックの出場権を巡り白熱したバトルが繰り広げられていました。
そんな最中、自分がオリンピックに出場するため最大のライバルを蹴落とすため世界選手権前にケガを負わせたという実在した事件、「ナンシー・ケリガン襲撃事件」が起こるのです。
そんな事件の張本人である関係者の証言のもと20年という年月をまたいで真実が暴露されます。
2017年に製作の本作はその「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の知られざる背景をたっぷりアメリカンジョークを含んで描きます。本作でイかれた母親を演じたアリソン・ジャネイはアカデミー助演女優賞を受賞しました。
サクッとあらすじ
1994年、リレハンメルオリンピックへの出場権をかけ、女子フィギュアスケート界の選手は激しい競争の渦中にいた。
トーニャ・ハーディングはアメリカ女子としては初で、世界では史上2番目に「トリプルアクセル」を決め、出場に向け一歩リードした形であった。
しかし、そんなある日最大のライバル ナンシー・ケリガン選手が何者かに襲われ、足に重度のケガを負った。
事件の関係者が次々と逮捕されてゆく中、信じられないことが発覚する。
事件の張本人はトーニャの元夫のジェフであった。世間はトーニャの関連性について疑い始めるが・・・
風刺満点の本作でわかる真のトーニャ
本作はトーニャ・ハーディングが「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を起こすまでのことを主に扱った伝記映画です。
ではトーニャ・ハーディングは一体どんな人物だったのでしょうか?
彼女は一流スケーターにも関わらずライバルを蹴落としてでも、オリンピックに出たいという人格はスポーツマンシップに反することです。
なぜ彼女はこんな人間へとなったのかと知るため、本作では事件後関係者がインタビューに答える形で彼女の幼い頃から彼女の半生を描くという方法を取りました。
本作には張本人のトーニャ・ハーディング、その元夫ジェフ、彼女のボディーガードショーン、そして彼女の母親ラヴォナがメインキャラクターとして登場します。
トーニャ・ハーディング
4歳からスケートはじめ、天才的な才能が開花し、幼少期から将来が期待される選手。しかし、彼女の性格の悪さや癇癪持ちなところは実は幼少期の母親からの虐待ともいえる教育方針が原因でした。
「スーサイド・スクワット」でハーレー・クインを演じていたマーゴット・ロビーが主人公トーニャを演じました。
ジェフ
彼女の最初の旦那であり、彼女の短いスケート人生を支え、狂わせた張本人。はじめは彼女との関係は良好だったのも、徐々にDV旦那と豹変していきました。
本作最大のトラブルメーカーをマーベルシリーズでバキを演じていたセバスチャン・スタンが演じました。
※ちなみにジェフがトーニャに一目惚れした際のナンパでかけた言葉は
「食べ物すきですか?」
こんなにヒドい誘い文句あるかと絶句ですが、もう完全にネタですね(笑)
ラヴォナ
自分の野望を娘に押し付け、言うことを聞かないと暴力をもいとわない完全に常軌を逸した怪物母。
トーニャの人生と本作ともに彼女の存在はトーニャをどんどん狂わせていく。最高に嫌味満載のクセモノを「ミニオンズ」などのアニメ映画にも出演しているアリソン・ジャーニーが演じます。
※ちなみにトーニャとジェフが初デートの際、このアホはデートについていきます。
母親が溺愛している娘の初デートにホイホイついていく、こんな話は聞いたことありますが、、、本当に、、あるんですね(笑)
ショーン
ジェフの友達で、トーニャのボディーガード、しかもめちゃくちゃデブ。この映画で最もバカでどうしようもない存在。
てかまずこの人の描き方に完全なる悪意を感じます(笑) 端役続きのポール・ウォルター・ハウザーがこのアホを演じます。
※ちなみにこの人の登場シーンは、常になにかを口にし、ボリボリ食べている。完全にこの人の人生がネタに思えてきます。
限りない哀感に満ちるトーニャの人生とは!?
トーニャ・ハーディングは天才的な才能の持ち主であり、誰もが彼女のスケートを見惚れたことでしょう。
しかし同時に人に恵まれない悲しい人生であると思います。人間にとって生まれて初めてみる大人は両親だといわれています。
そこで子供はその両親の背中をみて見様見真似で彼らの後を追います。
そんな人生の指標になるべき大人があの怪物母ラヴォナです。小さいころからスケートの才能はあったものの、母親の虐待的教育から、物心ついたときには怪物母Jr(女の子だが)と豹変してしまいます。
そして、はじめて好きになったひとはDV気質のあるダメ男。彼しか知らないトーニャは暴力を振られるも結局彼のもとへ帰っていくのです。
これはトーニャひとりがどうこうできる問題ではなく、いかに周りの人間が狂気じみていて、頭のおかしな人たちであったかということです。
ここからはネタバレです。
特に母親ラヴォナはまさに狂気に満ちた人間として本作では描かれます。娘がスケート場で練習中、トイレに行きたいというとおまえにトイレに行く時間はないと却下します。娘が少しでも反抗的な態度を取ると暴力をふるい、しまいにはナイフまで投げる付ける始末です。
これが僕だったら間違いなく殺されていましたね母親を早々に縁を切り、DV旦那ジェフと二人暮らしを始めますが、世間が「ナンシー・ケリガン襲撃事件」でトーニャの自宅に何日も張り込んでいるとき母親は娘の家へ何円かぶりに訪れます。
何日も家を占拠されているトーニャにはたとえひどい母親でさえうれしく嬉しいのです。泣きながら抱きつくのです。
やっと母親と娘が心を許せた、そんな感動的なシーン、、、のはずでした。
トーニャは異変に気づいてしまいます。母親は録音機を持参し、娘が事件に関与しているかの証拠をつかみに来たのです。もう徹底したクソ人間であるのです。
次にアホ丸出しなボディーガードです。
この映画に関して、本作は完全なコメディーですがこのアホのジョークがほとんどといっていいほど、彼に関するネタは豊作です。彼の登場シーンは絶対、なにかものを食べている。
めちゃくちゃおデブさんでボディーガードと豪語している。もう動けないだろ、そんなツッコミを入れたくなるほどヒドい体形です。言い出すときりがないほど、かれに関するジョークが山ほどあり、まさに彼の駆動で逐一笑ってくださいという様です。
トーニャという人間とは!?
トーニャ・ハーディングという人間はどんな人物なのか。一言でいえば「ほんとに切なく哀感に満ち溢れた悲劇の女王」といえるのではないでしょうか。
本作は完全にこんな人の人生をみんなであざ笑う映画になっていますが、これはどアメリカ映画を感じたことはないです。
映画の構成作りもよく作り込まれており、最近だと「デッドプール」や名作で僕のお気に入りである「アニーホール」(1977年製作)でおなじみの「観客に向かって話す」という映画手法の中でも禁じ手といわれる「第四の目を破っている映画」でもあり映画としてもクオリティーはかなり高く、そこが評価されたのだと思います。
びぇ!
映画「ブレードランナー2049」 感想ネタバレ:35年ぶりの続編が描く人造人間と人間の近未来とは!?
こんちくわ!Shygonです!
今回は「SF映画の金字塔」と呼ばれ、根強いファンがいることから「カルト映画」的人気を誇る「ブレードランナー」の続編として35年ぶりの新作
「ブレードランナー2049」
について熱く語りたいと思います。
2019年の近未来を舞台に人工知能が人々の生活に浸透する中、「人間とレプリカント(人工人間)の差とは」というこれから来るであろう未来を40年以上前から描いている前作「ブレードランナー」は映画史の中でも、絶大的な人気を誇ります。そして、35年の年月をまたぎ、待望の続編「ブレードランナー2049」が封切られたのです。
2017年に製作された本作は、舞台は2049年の近未来に置き換えられ、前作のその後が描かれます。核戦争の末廃れたアメリカを舞台に様々な物語が錯綜し、展開されます。35年ぶりの続編「ブレードランナー2049」とは一体どのような作品なのでしょうか。
様々なカテゴリーに分け、熱く語っていきたいと思います。
前作「ブレードランナー」が与えた影響とは!?
本作2049を語る前に、前作の「ブレードランナー」について触れておく必要があります。前作「ブレードランナー」は1982年に公開され当時としては珍しい「デストピア的未来」を描きカルト的人気を起こしました。
しかし、公開当時は「スターウォーズ」や「E.T」など明るいSF映画に圧倒され、世の中には浸透されなかったのです。年を重ねるたびに一定数のファンを獲得していき、いまではこれら人気作をしのぐほど人気作品へと上り詰めたのです。
前作「ブレードランナー」は間違いなく時代を変え、多くの人に愛されている作品です。なぜこれほど昔の作品にも関わらず、多くの映画人がいまなお映画作りにおいて参考にしていると明言するほどの大作になったのかはここでは語りきれません。
本作を理解するまえに前作「ブレードランナー」がなぜそれほど影響力を持ち、いまなお愛され続けているのかを必ず理解してほしいです。
なぜなら「ブレードランナー」をしるということは、つまり映画を知るということにもなるからです。大げさかもしれませんが的を得ている発言であると自負しています。下記にはかなり内容の濃い記事を前に書きました。是非ご確認ください。
35年の月日が経つ前作の解説はこちら
「ブレードランナー2049」は豪華すぎる天才の集い!?
そして、話はやっと本作「ブレードランナー2049」に戻ります。前作で監督を務めたリドリー・スコットは製作に回り、本作では新税ドゥニ・ビルヌーブ監督が務めます。これまで彼は「メッセージ」などを手掛けています。
脚本家は前作同様ハンプトン・フィンシャーとマイケル・グリーンが執筆しました。マイケルの前作「ローガン」はアメコミのアクション映画ながらアカデミー賞脚色賞にノミネートされました。
次は俳優陣です。主演は「ラ・ラ・ランド」や「ファーストマン 」でおなじみのライアン・ゴスリングが主人公のKを演じ、前作でテッカードを演じたハリソン・フォードも登場します。ウォレス社社長で敵役のウォレスをオスカー俳優ジャレット・レトが演じます。
人間とレプリカントが歩んだ道のりとは!? - Kの行方は!?
監督のドゥニ・ビルヌーブは大人気カルト作品の続編を撮るにあたり、その前に短編3本を公開しました。
- 「ブレードランナー2022:ブラックアウト」
- 「ブレードランナー2036:ネクサス・ドーン」
- 「ブレードランナー2048:ノーウェア・トゥ・ラン」
どれも20分に満たない短編ですが、前作「ブレードランナー」の2019年から2049年の「空白の30年」に一体何があったのかが描かれています。
なので、本作は「空白の30年」後の2049年から始ますのです。前作「ブレードランナー」の本質を理解したうえで、本作へと話を進めます。
前作では技術の進歩がレプリカント(人造人間)の製造を可能にし、人類の文明においても需要な役割を果たすと思われていました。
しかし、レプリカントが自由に物事を考え行動するようになると人間との差は
「感情の有無」
になっていきます。
前作の本編ではレプリカントかを見分けるために感情の落差が実験によって影響するか、否かで人間と識別をしていたのでした。しかし、レプリカントは徐々に感情が芽生えてくるのです。
そこで前作はこんな問いを投げかけて見せたのです。
「人間とレプリカントの差とは?」
感情を持ったレプリカントは人間ともう変わらず、その境界線をわたしたちは失いつつあったのです。そんな永遠に答えの出ないような問題を前作では投げかけます。
そして、30年後。彼らとの差は「魂の有無」と移り変わるのです。人間の死とレプリカントの死の徹底的な違いは魂が直結するかであります。
(ネタバレが含まれます。)
前作のレプリカントレイチェルとデッカードの間に実は隠し子がいたのでした。
いままでレプリカントは子供を産めないものとして考えられていたのですが、子供を産んだ後彼女は亡くなっていたのです。レプリカントと人間(?)の子の存在は人間とレプリカントと人間の境界線をぶち壊すことを意味するのです。
レプリカントが子供を人間のように産めるということを絶対認めたくない人間はその「神の子」を殺すように命じます。逆にレプリカントは我が同胞の希望の星ということで「レプリカント解放運動家」たちは必死で「神の子」を援助するのです。
そんな戦いの渦に巻き込まれる主人公Kは新型のレプリカントとして旧型のレプリカントを抹殺する「ブレードランナー」の職に就きます。そして自らがレプリカントながら、レプリカントの希望の星である「神の子」の抹殺を命じられるのです。
そんな「神の子」はK自身ではないかという疑心半疑のもと、Kは父親のデッカードへ会いに行きます。それは自分の記憶の奥底に幼少期の頃の記憶が頭の片隅にあったのです。
最終的にそれらの幼少期の記憶は植え付けられたものであり、自分は人間でなく、レプリカントであることを知り、失望してしまうのです。しかし、そんな自分のレプリカントとしての役目は「神の子」を守るということ。
父親デッカードを「神の子」、自分の娘と会わせると、真冬の雪積もった場所で、ひとり尽きるのです。
近未来の廃れた世界を描く本作の世界観とは!?
雨が画面全面に降り注ぎ、暗黒世界を徹底的に表現した前作とは打って変わり、重くずっしりとした雲から降り注がれる白い雪があたり一面を覆っているのが本作の特徴でしょう。
季節の変化と撮影
大人気作の続編ということもあり、前作「ブレードランナー」を強く意識して作られており、雨が降り注ぐ真夜中の描写も多々情景描写として登場します。
腐敗したラスベガスを彩るあたり一面に広がった砂漠、アジアの文化を意識したような都市作りは前作同様相当「ブレードランナー」 しかない唯一無二の世界観です。
それらの情景を大胆に映し出す、カメラワークは名撮影監督ロジャー・ディーキンスの手腕の高さを覗えます。(毎回アカデミー賞を逃すディーキンス、今回こそは初受賞を願ってます笑)
※これまでアカデミー撮影賞には14回ノミネートされていますが、いまだに無冠です…そして、ついに悲願のアカデミー撮影賞受賞いたしました!!
鳴り響く重量感ある音楽
現代の映画音楽家の中でも3本の指に入るハンス・ジマーが作曲を担当しています。音楽についてはただ最高、、、この一言に尽きます。
こんなに見ていて音楽映画の世界観を助長し、完成させられた世界を持つ音楽はやはり唯一無二の神業です。
各分野の天才が挙って集まり完成させた本作は稀に見る「何回でも見たいと思う作品」です。特にKが最後に力尽きるシーンほど視聴者をゾっとさせ、エンドロールの間に心を撃ち抜かれるような感情は感じた者しかわからないのです。
そんな本作アカデミー賞では5部門にノミネートされて、撮影賞と視覚効果賞の2部門受賞しました。個人的にはもう少し評価されてほしかったですね...
びぇ!
映画 「ブラックパンサー」 アベンジャーズの鍵を握るマーベル史上初の黒人ヒーローとは!?
こんちくわ!Shygonです!
今回はヒーロー映画初の主要キャストが黒人映画
ブラックパンサー
について熱く語ります。
2018年製作の本作は、
そして、
あらすじ
舞台はアフリカの架空の国ワカンダ。
主人公のチャラの父親が国際会議中に殺され(詳しくは 「シビル・
前国王の死により、
黒人で埋め尽くされる製作たち
出演者はもちろん、監督、
主要キャラクターは黒人であり、
最後に音楽です。
本作は本編のほとんどがアフリカを舞台としているため、サウンドトラックも自然とアフリカを彷彿させるような伝統的な音楽が鳴り響きます。そしてなにより注目なのは人気ラッパー「ケンドリック・ラマー」が本作のために新曲を書きおろしているということです!
「インフィニティ―・ウォー」に続く貴重な「ブラックパンサー」
ここからはネタバレが含まれます。前王の父が亡くなった後、チャラは伝統的な儀式後、正式にワカンダの新王に即位します。王というものは精神的にも肉体的にも強い存在でなければいけないため、それに不満のあるものは挑戦し一対一の肉体バトルが繰り広げられるのです。
実は謎の敵エリックは前王の父の弟の息子であり、20年前に父に殺されていたのです。それに強い憎しみを持ったエリックは仇を討ちをしたかったのです。一回はエリックの挑戦に撃ち負け、奈落の底に落ちたチャラでしたが仲間の助けもあり命を取り留めます。国民の象徴的な存在として、エリックを倒し再び王に返り咲いた彼は国際会議でワカンダの最新技術を世界に共有することを宣言し、映画の幕が閉じます。
そして最後にマーベル作品御用達のエンドロール後のおまけにはバキが登場します。「シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ」で自らの身をくらますためワカンダに匿ってもらっていたのです。
今年最大の注目作「アベンジャーズ インフィニティー・ウォー」に続く新たなヒーローの単独映画「ブラックパンサー」はマーベル史上初の黒人ヒーローとして期待以上の映画であったこてゃ間違いでしょう。
ますますアベンジャーズの行方が気になります。
びぇ!
映画「シェイプオブウォーター」 感想ネタバレ:怪獣と難聴の熟女の恋愛映画
こんちくわ!Shygonです!
今回は第90回アカデミー賞で最多13部門にノミネートされた映画
「シェイプ・オブ・ウォーター」
を熱く語ります!
2017年に製作された本作は冷戦期のアメリカを舞台に政府の秘密研究所に捕らえられた半魚人とそこで働くひとりの女性との純粋な恋物語です。
はじめ聞いたとき、半魚人と女性とのラブストーリーの恋愛映画なんて変な映画としか思っていませんでした。
ところが、ベネチア映画祭で最高賞にあたる金獅子賞を取り、ほかの映画祭の主要タイトルとみるみる取っていきました。
アカデミー賞では最多の13部門が候補となり、作品賞を含む4部門を受賞しました。
いざ映画館に足を運んでみると
なんて美しい映画なんだろう、、、
ぽつりと言葉が出てしまうくらい非常に綺麗で心が洗浄された気分になります。
怪獣と人間という不気味なカップルをこれほどにも鮮明に映し出し、心が浄化されるような体験をするのははじめてです。
そしてこんなに様々な仕掛けが全編通じて張り巡らされている映画はまさに映画オタクのギレルモ・デル・トロ監督らしいといえるでしょう。
では一体どんな体験を本作「シェイプ・オブ・ウォーター」でしたのでしょうか?熱く語りたいと思います。
本作の様々なトリックの種明かしは最後の章でばっちり語っていきたいと思います。
サクッとあらすじ
1960年代アメリカ東部。
ソ連との冷戦にシビレを切らす両国は研究に研究を重ね、
他国を圧倒しようと必死であった。
ある日、政府の秘密に基地にアマゾン近郊で捕獲したという半魚人が研究所に運ばれてきた。
そこで夜勤として働く発音生涯のイライザは徐々にその半魚人に惹かれていくが・・・
ソ連のスパイ、清掃員の恋、それに加担する売れない画家など様々な人たちの思惑が錯綜する中、女性と半魚人の禁断の恋物語がいま幕を開ける。
怪獣と熟女の純粋な恋物語
2017年に製作された本作はベネチア映画祭で公開されると最高賞にあたる金獅子賞に輝き、各映画賞でも主要部門を独占した話題作です。
脚本と監督を務めたのはギレルモ・デル・トロで、彼は「パシフィック・リム」や「パンズ・リビランス」などで有名です。
彼の特徴として幻想的なおかしな空間を毎回徹底して作り上げます。今作も3年半かけ綿密に作り上げ半魚人には江戸時代の絵をモチーフにしたそうです。
キャストはサリー・ホーキンスが発音に障害のある清掃員を、リチャード・ジェンキンスがゲイの売れない老人画家に扮しました。
黒人同僚のゼルダをオクタヴィア・スペンサーが演じました。
サリー・ホーキンスは全編通じてほとんど話さず、手話での会話は圧倒的な存在感を魅せる傍ら、妄想の中でのミュージカルシーンや目つきで訴える彼女の演技はまさに天才しかなしえない技です。
そして、半魚人はモーションキャプチャーなどは使わず、実際にダグ・ジョーンズが演じました。
半魚人という人間離れしたキャラクターを彼は見事に演じ切り、観客は現実世界との区別を難しくさせるほど驚きの連続でした。
立場の弱い全ての人間に送る応援映画
はじめにキャラクターの共通点を見ていきましょう。
主要なキャラとして、主人公のイライザ、黒人同僚のゼルダ、ゲイの老人画家ジャイルズ、そして半魚人です。
イライザは幼い頃のケガから話すことができず、手話で会話をしています。ゲイの老人は画家をしていながら、絵は全く売れず、、そして黒人女性のゼルダ。
彼ら3人に共通することは誰も社会的に認められず、なにかを主張しようとすることすら許されない「声を持てない」人たちなのです。
1960年代という時代は、ゲイであることは認められず、黒人でかつ女性というのも、障がいであるのも、他の一般的なひとたちと同じ立場で物事を発することができないのです。
そんな社会的な立場の低い彼らが気取っている白人に「反逆する映画」なのです。
そしてこの状況というのは数十年経った今でさえ変わっておらず、そんな世界情勢に終止符を打とうという本作の覚悟が見受けられるのです。
さらに半魚人と女性の恋愛物語は全世界の人たちへのエールを送っているのです。
「半魚人と人間の恋愛物語」を聞くとなにを思い出すでしょうか。
「人魚姫」、そして「美女と野獣」が挙げられるでしょうが、これらの物語は最後には扇様に戻ったり、両者が美男美女であるのが必須条件であることをもとに物語が成り立っているのです。
そんな物語を見てきた僕らは勝手に心のどこかで固定概念を植え付けていたのです。
人間と半魚人は美男美女じゃないとだめ!
しかし、そんなのは一種のプロパガンダであり、監督はそんなステレオタイプを打ち砕きたかったのです。
いままで、誰が「醜い半魚人と40代の発音障がいを持った女性の恋愛物語」を観ようと思ったのでしょうか。
この映画は紛れもなく新しい映画であり、未来に確実に残っていく映画であることは間違いないでしょう。
本作が想い描く「愛の形」とは!?
ではタイトルの「シェイプオブウォーター(水の形)」にはどんな意味が込められているのでしょうか。
インタビューの中で監督がこのように語っていました。
水はどこでも通り抜け、どんなものにも形が変化します。
つまり水は最も柔軟で強力なのです。
そして、それは「愛」でもあるのです。
年代、宗教、性別、人種など愛する相手によって愛は形を変えます。題名の「Shape of Water」はそんな水の性質から愛の形へのオマージュなのです。
そんなタイトルに込められている本作の訴えは外見の違いや、偏見に捕らわれ、ひとつの枠組みの中でといういまの形の社会的構造からの脱却を試みようとしているのです。
水のように愛は柔軟に強力なもの、そしてそれは愛の形でもあるのです。
最後にこんな言葉でこの章を閉めたいと思います。
この言葉は僕がこの映画で一番好きな言葉です。
"Unable to perceive the shape of you, I find you all around me."
"Your presence fills my eyes with your love,"
"it humbles my heart, for you are everywhere."
訳
愛は感じることができる たとえそばにいなくても
とてもこの詞的な美しい言葉を日本語にするのは難しいですが、こんなに素晴らしく、ポエムのような言葉で本編は幕を閉じるのです。
謎の多い本作のトリックを大解剖!?
この章ではいくつかのカテゴリーに分け、本作のトリックを紐解いていこうと思います。
はじめに音楽の存在です。
映画業界でも3つの指に入るアレクサンドラ・デスプラが担当しています。
彼は今まで「英国王のスピーチ」,「アルゴ」,「ハリー・ポッター」をはじめ有名作品を手掛けている他、「グランド・ブタペスト・ホテル」では映画人の最高の栄誉、アカデミー賞もとっています。
そして本作でも見事2度目の作曲賞に輝きました。
作品によってかなり雰囲気が変わっていきますそして本作では過去作品を上回る最高な音楽が出来上がっていると個人的には思います。
「半魚人と発音障がいの女性の恋愛物語」となると現実離れしているため、観客を自然と別世界へ誘い、本作の世界観と現実世界の別離が不可欠になります。
「ハリーポッター」のような魔法の世界を観客に提示することが必要なのです。
彼の音楽は果てしなく続く深海をさまよう人魚を追いかけているような感覚を気付かぬうちに脳裏で体験している、そんな感覚を覚えます。
しかし同時に舞台がアメリカのそう遠くない過去の話なため、現実感もしっかり保てているのです。
言葉では難しいですが、音楽が本作の雰囲気の枠組みを決めているといっても過言ではないでしょう。
そして、主人公のイライザは声を発することができないのに夢の中でミュージカル映画の主演を演じており、現実でもミュージカル映画を見ながらダンスをマネするなど、未知の世界にキャラクターまでもがどっぷり浸かっている状況なのです。
これからはネタバレが入ります。
主人公イライザについての謎解きをします。彼女についての情報をまとめると小さい頃の事故で声を発せず、そのキズがいまも首回りに残っている。
さらに捨て子であり、海の麓で発見された。
彼女に関しておかしなこともあります。開始一分経つと、40のおばさんの自慰行為が映し出されます。しかも、彼女は水の中でそれを行うのです。
ラストのシーンでは海の中で半魚人に抱きかかえられると、ないはずのエラがニョキニョキでてくるのです。これらの情報をもとにするとひとつの仮説が生まれます。
イライザは半魚人であった。これが本当だとすると、話せないことや自慰行為までもが海の中、そして事故だとされてたキズはもともとあったものになります。
そして海の近郊で発見されたのも納得がいくのです。
そんな仕掛けまで用意する本作はバケモノです。
真相はいまだに謎なので、わかりませんが映画の最後に観客に謎を残すような方法は「ブレード・ランナー」のようで個人的には好きですね。
日本公開されるときは一部のシーンがカットされ、R18がR15になって公開されるようですが、ほんとに毎回日本のすることには唖然とします。
この映画はもとから「大人の映画」であり、アメリカでもR指定での公開です。正直この無礼な対応に若干の怒りを覚えますが、ぜひみてほしいものです。
びぇ!
映画「君の名前で僕を呼んで」 感想ネタバレ:本作を見たゲイの友達はなぜ号泣したのか?
こんちくわ!Shygonです!
今回は「君の名で僕を呼んで」を熱く語ります。
アメリカは日本とは違いLGBTと呼ばれるレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、そしてトランスジェンダーのコミュニティーが広く認められています。
学校を歩いていても、普通のカップルのように過ごしている彼をよく見るほどです。そんな中、僕のまわりにも何人かLGBTの友達がいるのですが、本作をかれらと見に行きました。
本編が終わりエンドロールが流れ始めると、横で涙しているのです。
なぜこれまで様々な同性愛の映画を見てきた彼らはこの映画で涙したのでしょうか?
2017年に製作された本作は1980年代のイタリアを舞台に一夏の青春物語です。
様々なカテゴリーに分け、熱く語っていきます!
サクッとあらすじ
1983年イタリアの夏。
17際のエリオは夏休みに家族とともに避暑地を求めて、別荘に移っていた。
普段はアメリカの大学で考古学の教壇をとる父と、何か国語も流ちょうに話す母にエリオも引けを取らず、イタリア語、フランス語、英語を操り、ピアノ、ギターをも弾ける秀才であった。
そんな家族のもとに父親のアシスタントでありエリオの面倒をみるようにオリヴァーが訪ねてくるのであった。
エリオとオリヴァーの恋は突然はじまるのであった・・・
本作が描く最高の「美」とは!?
この映画ひとことでいうと、美しすぎるのである。
具体的に本作が描く「美」とはなんなのか、様々なカテゴリーに分け語ります。
古代ローマを彷彿させる建物と風景、そして映像美
真夏のイタリアの別荘地を舞台に、古代的な建物や壮大に広がる緑に人々は魅せられます。こじんまりした街並みに、ルノワールやモネの世界観のような生い茂った田舎町は「美しい」以外の言葉が見当たりません。そんな駆け回りたくなるような大草原を舞台に本作は語られそんな贅沢な景色を圧倒的な映像美で描くのです。
彫刻のような肉体美
主人公のエリオは、全編通じてほとんどが上裸なのです。
まるで幼い少年のような未発達な体とは対照的に、オリヴァーは鍛え上げられた筋肉で覆われた体つきをしています。そんなかれらをみているとローマを描くベルニーニの彫刻を彷彿させます。まさに「動く彫刻」とべきいえるほど美しいのです。
一直線に生きる彼らの恋愛美
この観点に関しては次章で詳しく語ります。
本作が描く恋愛観とは!?
限られた夏休みという時間の中で、誰もが経験したような初恋の甘酸っぱさを詳細に描きます。
エリオにとって愛というものをはじめてしる喜びと、失う喪失感をひと夏に体験するのです。そんな無頓着なエリオはこんなことを教わるのです。
恋愛というものははじまりがあるが、いずれおわりがくる
17歳には辛すぎる夏の経験を切り取り、淡々とカメラは彼を追いかけます。本作は同性愛の映画でも、決定的に他の同性愛の映画と違う個所が何点か見受けられます。
エリオはオリヴァーと恋仲になる一方、同世代の女性の彼女がしっかりいるのです。一般的な同性愛の映画の特徴として、
二人が結ばれているということを隠したり、それを後ろめたく思う気持ちが必ずどこかで描かれます。
例えば、「ブロークバック・マウンテン」、「ムーンライト」は自分がゲイであることに後ろめたい気持ちを抱き、隠し通そうとする葛藤が非常に巧妙に描かれます。
それは法律上、同性愛が認められていないことや、世間からの風通しがきついなど様々な要因がありますが、本作にはかれらに後ろめたさが全くないというのが特徴です。
まさにココが友達が涙した理由です。
いままで数多くの同性愛映画が存在する中、そのどれも後ろめたさや自分の本当の気持ちを押し殺す場面ではなく、本当の自分を全部さらけ出す様に感動を覚えたのです。LGBTコミュニティーを本当に心の底から認める最初の映画になったのではないでしょうか。
最近徐々に同性愛が社会的に受け入れられてきましたが、実は古代ローマでは同性愛は認められており、これまで「古代ローマ」というワードが一貫して出てきたのはそんな理由からきているのです。
実は本作自体が古代ローマ風な映画であり、設定は違えど、古代ローマの神話的な話に過ぎないのです。そして、最後シーンでは季節が変わり冬になると家族のもとに一本の電話が入ります。
「オリヴァーが結婚した。」という電報です。
家族は歓喜に飲まれるほど彼の結婚発表を喜びます。エリオを除いて。家族の誰も知らないふたりの禁断の恋。
彼は夏の思い出を全て囲い込むように暖炉の前で涙するのです。あの暖炉の前でひとりでひと夏を思い出すエリオは言葉になりません。
脚本家のジェイムス・アイヴォリーは本作の執筆に9か月かけ、監督のルカ・グァダニーノは「ビフォア・サンライズ」(リチャード・リンクレイタ―監督)のような続編構想を練っていると発言するなど、もう興奮する話ばかり耳に飛び込んできます
びぇ!
映画「バトルオブセクシーズ」 感想ネタバレ:女性の権利向上のため必死に戦った女性テニス選手の感動の実話!!!
こんちくわ!Shygonです!
今回は2018年上半期の中でも注目株の映画
バトルオブセクシーズ
を熱く語ります!
2018年に製作された本作は、1972年に実際に起こった有名テニスプレイヤーの男女がコートの上で熱い死闘を繰り広げた事実がもとになっています。
実際に実在し選手としても有名であり、男女同権を訴えていたビリー・ジーンキング(29歳)と男性優位主義者の元テニス選手ボビー・リッグス(55歳)の「性別を越えた戦い(バトルオブセックス)」を50万人以上がテレビの前で見守りました。
カリスマ同士の正面衝突の背景とは?
1970年当時、アメリカでは圧倒的に男性社会であり、女性は家庭を守り、男性の世話をするもとと思われていました。
これはアメリカに限らず、日本でもつい最近まで行われていたことですが、プロスポーツ界もその例外ではなく、特に賞金では男女間でかなりの格差が生じていました。
その風潮を変えようと男女同権を訴えるひとりの女性、ビリー・ジーンキングがいました。彼女は選手として既に名声を得ており、女性のカリスマ的存在でした。
そこに男性優位主義者の元テニス選手ボビーリッグスが彼女にチャチャを入れ始めるのです。彼の成すこと全てドが過ぎていたのです。
インタビューでは「女は料理とベットにいるときだけだ」と発言し、自らを「ショービニスト(男性優位主義者)」と称するなど男女間の対立は白熱さをどんどん増していきました。
ビリー・ジーンキングは必死にその賞金格差をテニス界にも訴えましたが、関係者らは「女のテニスは迫力がないし、つまらない」などと言われ、ボビー・リッグスには「55歳の俺でも女には勝てる」などと言われる始末でした。
そこで女性の権利向上のため自らこの無謀ともいえる、前代未聞の戦いに挑むのです。
公式戦ではないため、試合までビリーはあぐらをかき、様々なことを仕出すのです。55歳にも関わらず、フルヌードになってキングをおちょくり、女装でテニスをし、そして「女性差別のブタ」と書かれたTシャツをきるなど、徹底的に女性を罵倒したのでした。そしてついて前代未聞の男女間の未来を賭けた試合がはじまるのです。
この試合が後世に与えた影響
ここからはネタバレになりますが、公式戦でもないただのテニスの試合に全米が注目する結果となりました。
それはテニスの試合以上に男女平等を訴える女性とそれを阻止せぬとする差別主義者の戦いでもあったのです。
映画の中で、ボビー・リッグスのスポンサーとして出てきた「シュガー・ダディー・キャンディー」の創設者のロバート・ウェルチも極右主義者をして知られ、この試合は女性陣としては勝つこと以上に意味のある試合でもあったのです。
テニスの試合は白熱した展開が繰り広げられ、ビリー・ジーンキングの圧勝で幕を閉じたのです。
この結果は女性を奮い立たせ、女性は男性の補助で、社会の表に立つ必要はないなどの古いしきたりに「ストップ!」をいう出来事のきっかけだったのかもしれません。
そして、ビリーが入場曲として使っていた曲「I am Woman」はその年の大ヒット曲になったそうです。
2人のカリスマを演じきった俳優たち
ビリージーンキング役はエマ・ストーンが演じました。本編通じてノーメイクで演じ、そして実際のテニスを打ち合うシーンはCGではなく、実際に練習し撮っていたそうです。
彼女は前作「ラ・ラ・ランド」でアカデミー主演女優賞に輝いた人です。
前作「ラ・ラ・ランド」でハリウッドで女優を夢見る女の子を演じ、「女王陛下のお気に入り」ではアグレッシブな悪女を演じるなどここまで逆方向の演技まで完璧にこなせるのはまさに天才です。
ボビー・リッグス役はスティーブ・カレルが演じ、その表情、顔全てが本人と引けを取らないまさに絶賛すべき変わりようです。
彼はこれまで「40歳の童貞男」などのコメディ映画から「バイス」や「ビューティフルボーイ」などの社会派ドラマまで演じきる俳優さんです。
そして、監督です。本作はジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスの夫婦が務めています。彼らは本作の他にも2006年公開の「ミス・リトル・サンシャイン」などで知られています。
女性の権利向上のため戦ったテニスプレイヤー
いままで本作を一通り全容を説明してきましたが、ボビーリッグスの人物像を理解して何か現在に通ずるものあるかと思いました。米国大統領トランプ大統領です。
インタビューの中で、監督は当時ヒラリー候補とトランプ候補で大統領選をしていたとき、本作と共通する部分があると答えていましたが、彼が大統領になり、再び男女間の差別というものを考えるべきときが来たのではないでしょうか。
本作は数十年前の話を映画化しただけではありますが、その当時と状況は変わってなどいなく、トランプのような人が国のトップになってしまったいまの世の中を見直すという意味で、この映画を通して考えるべきです。
そして、2017年半ばにハリウッドを驚愕させる出来事がもう一つ起こります。大物プロデューサー、ハーベイワインスタインの長年に渡ってのセクハラが暴露され、それに伴って多くの大物が芋づる式で明るみになりました。
多くの女性が#MeTooと被害を訴える一大事に発展しましたが、そんな男女間の差別も本作「Battle of Sexes」にも訴えかけてるのです。
いまハリウッドが抱える解決せねばならない問題に対して、本作はダイレクトに訴えかけているのです。
2017年夏公開の「ワンダーウーマン」はヒーロー映画の枠に留まらず、女性を鼓舞する映画としてものすごく脚光を浴びましたが、本作も今年を彩る映画の一作になったのは間違いないでしょう。
ひとりの女性が数十年前に訴えかけたかった男女同権。そんな彼女が求める世界はいつになったら訪れるのでしょうか。
男女同権に社会が近づく一歩として、セクハラ問題は人々の認識を変え、本作はその動きに間違いなく加担したでしょう。
本物のビリー・ジーンキングはその後10年以上にわたる女性との不倫が明るみになり、世の中からバッシングを受けることになりますが、本作では彼女の最後が描かれることはなく、あとがきにも一切そのことは触れられていませんでした。
びぇ!
映画「ベイビードライバー」感想ネタバレ:一風変わった新感覚のアクション映画
こんちくわ!Shygonです!
今回はアクション映画にも関わらずアカデミー賞でも評価された
ベイビードライバー
を熱く語りたいと思います。
2017年に製作された本作は強盗集団の逃走の手助けとして、ドライバーをしている主人公が様々なことに巻き込まれてゆく様を描いき、方向性が全く違うのにも関わらず、主要な映画祭で取り上げられとても芸術性に高い新しい映画として注目を浴びています。
世界最高峰の映画祭アカデミー賞では受賞こそ至らなかったですが、3部門のノミネートを果たしました。
サクッとあらすじ
主人公べ―ビーは強盗犯のチームの一員として、ほかのメンバーの逃走経路を確保するとともに、凄腕ドライバーとして活躍しています。
しかし、彼は仕事中も含め、四六時中イヤホンで音楽を聴いている青年であった。
それは彼の過去の苦い経験が深く関わっていたのだった。。。
ただのアクション映画で終わらない理由とは?
本作はエドガー・ライトが監督と脚本を担当しています。
彼は昔から変な映画を撮るようなことが多く、最近の中では「ワールズエンド 酔っ払いが世界を救う!」という名前の通り少し変わった映画が多いといった印象です。
主演はアンセル・エルゴート。長身でイケメンな彼は様々な映画にいま引っ張りだこの俳優です。
他にも有名どころとしてはジェイミー・フォックスやケビン・スペイシーなど豪華な顔ぶれです。
一見この映画のあらすじを見ると「トランスポーター」シリーズを彷彿させます。
しかし、その他のありきたりな設定や映画の雰囲気を超えるような魅力がこの映画にはあるのです!いくつかある画期的な仕掛けをご紹介します
音楽がブーストベイビー
いままで多くのカーアクションを見てきた筆者はほとんどの仕掛けにはうんざりしています、本作以外は。
通常「ワイルド・スピード」のような男の中の男が繰り広げるカーアクションは多くのファンを魅了させます。
しかし、本作は全編通じて、主人公ベイビー好みの音楽が流れっぱなしになっているのです。
車同士がもの凄い音を出してカーアクションを繰り広げるときが最大の盛り上がりを見せます。
そしてそんな場面ではその臨場感を最大限に引き出すため、周りの音を抑えます。
しかしこの映画は本編の中でカーアクションが一丸の見せどころのはずなのに、大音量の音楽が本編の音を支配します。これは一番の長所を潰すことになるのです。
ではなぜ一番の見せどころを潰して映画として成り立っているのでしょうか?それが主人公の特殊能力に繋がっていくのです。
これはネタバレになりますが、主人公ベイビーは幼いころ車の中で口論していた両親の交通事故で先経たれます。
まだ幼い少年であった彼には辛すぎる経験でした。それからというもの彼はIpodで音楽を聞いていないと感情を取り乱すようになってしまいます。
そして音楽を聴いている彼はまさに無双状態です車の運転は言うまでもなく、達人級でどんなに困難な状況でも出し抜く実力があるほどです。
そして、耳元で爆音で音楽を流しているのにも関わらず、相手の口元の動きを見て、何を言っているか瞬時に理解し、返答までするというまさに天性の実力です。
カーアクション映画と歌詞付きの音楽という、水と油の関係のような相対する関係の2つがこんなにも交じり合う映画は見たことがありません。
それを可能にしたのは紛れもなく、主人公ベイビーの特質と音楽が生み出すリズム感です。
手話が表現する映画の斬新さ
主人公の同居人として老黒人が登場します。ベイビーは白人の青年で、両親は回想シーンの中でどちらの白人なのがわかります。
その彼とこの足が悪く、手話を交わして話す両者の関係はそこまで本編では語られませんが
そんな両者が手話を返して会話するのは極めて新しく、斬新と言えると思います。アクション映画に関わらず、ほとんどの映画に手話が出てくることがほとんどないため、そしてそれがアクション映画という一見手話のようなものと全く関わりがないもの同士を繋げる仕掛けはまさに斬新といえよう。
これはカーアクションと音楽の関係のようにここでも手話とカーアクションが交じり合っているように思えます。
ベイビードライバー
過去に傷を負った一人の青年の恋物語でもあり、裏では強盗犯として凄腕ドライバーをする犯罪アクション映画であるある「ベイビードライバー」
そして最後のシーンでは強盗として警察に顔を割れたため、愛する彼女と共に逃走を図ろうとする彼の目の前に警察に取り囲まれます。
彼女の前で自首を決心した彼は車のカギを川に投げ入れ、投降する姿はまさに男のロマンそのもののような気がします。僕的には最後の幕の閉じ方が映画として最高に花のある描写であると思います。
びぇ!
映画「レディーバード」感想ネタバレ:思春期の娘と母親を描く史上最高の家族物語!!!
こんちくわ!Shygonです!
今回はRottenTomatoesという映画サイトにて史上最高の好評価を受けた
レイディー・バード
について熱く語りたいと思います。
軽い気持ちで映画館にいき思わず涙が出てくるほどの映画を久しぶりに見ました。いままで多くの映画を見てきた筆者ですがここまで自分と通ずる何かがあり、共感する映画は他にないです。
2018年に製作された本作は監督と脚本を担当し、女優でもあるグレタ・ガービングの経験談を元に、思春期の中でたくましく生きる娘と母親の家族ドラマです。
サクッとあらすじ
2002年カリフォルニア州サクラメント。
高校2年生のクリスティーンこと”レイディー・バード”は髪を真っ赤に染め、カトリックの高校に通っていた。
そろそろ進学のことを考え始めた彼女は母親に東部に進学したいと打ち明けるのであったが、、、
サクラメントはド田舎と毛嫌いする娘と思春期を果敢に生きる娘を育てる母親の壮大な人間ドラマがいまはじまる。。。
「レイディー・バード」の背景
2017年に低予算で製作された「レイディー・バード」は本作で監督兼脚本を務めた女優グレタ・ガービングの初監督作品であり、彼女の経験を元に描かれているといわれています。
名門コロンビア大学を卒業後、女優として活躍する傍ら、「フランシス・ハ」では脚本も兼任しました。
インタビューの中で、彼女は「自分の経験ではないけど、私の知ってることと通ずることがたくさんある」と答えています。
そして、「6歳の僕が大人になるまで。」の女性バージョンのようなものを目指したとも語っています。
(僕がアメリカに来る決定打は「6歳の僕が大人になるまで。」であり、だからこの作品が大好きなのです)
若手アベンジャーズ集結!!!
キャストはシアーシャ・ローナン、ルーカス・ヘッジス、ティモシー・シャメラと実力派若手が脇にそろっています。
シアーシャ・ローナンはアカデミー賞にノミネートされた「ブルックリン」や「ふたりの女王メアリーとエリザベス」に出演するアイルランド出身の若手女優です。
ルーカス・ヘッジスは昨年の「マンチェスター・バイ・ザ・シー」や「スリービルボード」にも出演しているいまもう大注目の俳優です。
ティモシー・シャメラは「君の名で僕を呼んで」 では若干22歳ながら、
第90回アカデミー主演男優賞にノミネートされ、「ビューティフルボーイ」ではドラック依存症に悩まされる青年を熱演し、話題になりました。
最後に本作で母親役を演じたローリー・メトカーフは第90回アカデミー賞助演女優にノミネートされています。
まさにキャストはこれ以上の人材はいないのです。天才たちが描く青春物語とは一体どのようなものなのでしょうか
イタすぎる「レイディー・バード」の生き様
高校2年生から3年生の一年間をコメディタッチで描きます。同時に青春期ならではの親子の葛藤を繊細に描きます。
クリスティーン・マクファーソンこと「レイディー・バード」は本名を嫌い、みんなには「レイディー・バード」と呼んでと豪語するなど青春期ならではの、思い返してみるとイタすぎる体験ばかりです。「レイディー・バード」は日本語でてんとう虫で、意味は特にないそうです。
他にもカトリックの学校ながら髪をピンク色に染め、神にお供えする麩菓子のようなものをボリボリ食べたり、お店にある雑誌を万引きするなど決していい生徒ではありません。
そして、友達にお金持ちの家を自分の家といって豪語するなど自意識過剰な部分もあったりします。
それらを全部含めて自分を少しでも大きく見せ、そんな自分を彼女は少しカッコよく思うのです。
数年後それを見返すと、イタい思い出として残りますが、それは誰もが通ってきた道のりであり、それが青春そのものなのです。
笑いあり涙あり女性の青春物語
監督のグレタ・ガービングは本作に限らず、彼女のコメディ観はとても僕のお気に入りです。
コメディ編
女性とは思わせない下品なネタをぶち込んでくるなど、男性には決して描けない女性の繊細さや上品さが表現されているのと同時に女性には決してない下ネタを次々と入れてくる前代未聞のタイプです。
本作はコメディ映画であるので全部はご紹介できないですが、その一部を取り上げます。
アメリカではタバコとエロ本は18歳になると買えます。(酒は21歳以上です)18歳の誕生日を迎えるとすぐさまお店に駆け込み笑顔でタバコとエロ本を購入し、堂々と街角で読みながら、タバコを吹かすのです。
それはまさにいままでお調子者の典型的なパターンで僕が映画館へ足を運んだ際もゲラゲラ笑い声が聞こえてきました。そうです、笑っていた人は僕も含めておそらく同じような体験をしているのでしょう
感動編
本作は青春という非常に限られた難しい期間をコメディタッチで描くの同時に思春期真っただ中の娘とそれを支える母親の親子ドラマでもあります。
ド田舎のサクラメントを毛嫌いし
ニューヨークに憧れをもつ娘ですが、
お金がなく公立にいってほしいと願い母親の対立し
服の好みで意見が割れ、毎日が口喧嘩の連続です。
思春期の娘は自分の名前すら好きになれず、なにもかもに納得がいかないためすぐに母親にアタリます。
車内でニューヨークに行きたいという娘とそれを断固として認めない母親は口喧嘩になり、ついに娘は走行中の車から飛び降りわざとケガをするなど手のかかる娘です。
そんな娘を陰から見守る母親はこの物語に限らず、どの家庭でも共通することです。
エンディングシーンで娘がサクラメントを旅立つシーンでは一度は母親は娘を送らないと見向きもしませんが、唯一の娘の大学進学には手紙をしっかりスーツケースに隠し入れ、最後まで意地をはった自分に後悔して涙するなど
思春期ならではの娘と母親の本音の言えないけど、こころでは通じている妙な関係は涙がポロリと出てくるものです。
新天地で新たな生活を始めた娘もはじめて自分の名を本名である
クリスティーン
と名乗るシーンは感動以上に彼女に感情移入してしまうシーンでもあるのです。
思春期という感情がうごめきあう大変な期間を映画として描くのは難しいのにも関わらず、コメディタッチで巧妙に観客を笑わす本作は絶賛の一言に尽きます。
「レイディー・バード」が魅せる裏ワザとは!?
本作実に映画とは感じさせない部分があります。普通の映画は会話シーンの際は一方が話し、終わったらもう片方が話始めるというのが普通です。しかし、人というものはカッとなると人の話など聞いていられません。
本作は母親との会話はほどんど感情的になり何を言っているのかはっきりわからないのです。
娘の無謀な要望に母親は無視するのですが、娘は全く動じず、動き回る母親を追いかけまわしながらひたすら主張するのです。
本作の親子間でも会話シーンは観客に伝える気など全くなく言い争いの連続です。でもそれが思春期であり、誰もに通ずることなのかもしれません。
いままで思春期について描く作品は多いですが、こんなにも赤裸々にかつ、コメディタッチで表現するのは非常にまれであり新しい作風です。
ぜひ映画館に足を運び、親子で見てほしいという切実な願いを込めて締めさせていただきます。
思春期を抜けはじめてまわりを理解するようになった僕だからこそ、本作のことが理解でき、母親という偉大な存在にやっと気づかせてくれた、そんな作品が本作「レイディー・バード」でした
びぇ!
10分で完全解説!映画『スリービルボード』の真意と犯人を考察する!?【あらすじ感想ネタバレ】
こんちくわ!Shygonです!
今回は各映画祭で絶賛の嵐
スリービルボード
を熱く語りたいと思います!
僕はここで断言しますこの映画「スリービルボード」は間違いなく2018年ベスト映画であり、僕の中で、数少ない何回も見たくなる映画の一本です。
好きなんですよ!!
このような人間の思惑や心情が入り乱れ、話が展開していく映画を。
見てて迫力を感じたり、映像美があるような映画ではなく、人々の普遍的な生活の一部を切り取ったような映画です。
なので、ぜひ見てほしい。
僕が太鼓判を押す映画、それが「スリービルボード」です。
本作はど田舎を舞台にある1人の女性が大胆な看板を建てたことで、事態思わぬ方向へ向かうのです。それは誰も予想だにしない出来事の連続でした。
サクッとあらすじ
舞台はアメリカミズーリ州田舎町エビング。
数ヶ月前に娘をレイプで亡くなり、未だに犯人逮捕に至ってない警察に腹を立てたあるお母さんが挑発的な3つの看板を建てたとことが、警察を怒らせてしまう。
全く屈服しない彼女のやりようは度肝を向いたものへと変わっていき、誰も止められなくなってしまう。
ただのひとりの女性の思いつきが一般市民だけでなく警察までも巻き込む大事態へと発展するのであった。
「スリービルボード」はなぜ3つの看板なのか?
本作は日本公開時に「スリービルボード」として改題され劇場公開されました。なので、原題は
Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
という題です。
語尾の2字はミズーリ州エビングというアメリカの地名の名前で、はじめの3字は道路脇の3つの看板という意味です。
本作は主人公ミルドレッドは娘が殺されたことを悔やみ、町の入り口に大きくそそり立つ3つの看板に警察の対応の悪さを訴える広告を出すことから始まります。
エビングはとうの昔に廃れ、町の入り口に大きな3つの看板だけがぽつんと残っている状態でした。
繁栄期にその3つの看板は町の象徴的存在だっただろうですが、いまはその面影すら見えません。
そんな町を象徴する大きな3つの看板を由来としてこの映画の題名は名付けられました。しかし、実はこの3つの看板という題名
ただ看板が3つあるからではない
ココが本作の重要なポイントです。
3つの人物にスポットを当てて進行していく
本作の主人公は誰と言われると、わかりません。
はじめはミルドレッドというレイプで娘が殺された母親の話なのですが、徐々に新たな人物が物語の舵を切っていくようになります。少しするとカメラはまた別の人物を追うようになるのです。
境目の個所で故意にテロップを入れて主人公を変えていくのではなく、見ているといつの間にかに観客は別の人物を追っていたという非常に奇妙な状況が毎回出来上がります。
はじめにミルドレッドを主人公として捉え、追っていたとき端役に過ぎないと思っていた人がいきなり主人公になる、こんな巧妙なトリックはたまりませんよ!!!
具体的にその3人は誰なのか
キャラクターの魅力については次章に語ります。
3人の大きな看板を背負うキャラクターたち
(ネタバレが含まれます。)
主要3人のキャラクターについて触れておきます!
①ミルドレッド(フランシス・マクド―マンド)
7か月前に何者かにレイプされ殺害された娘の母親。
いまだに解決できていない警察に腹を立て、
1枚目には
「私の娘はレイプで焼き殺された。」
2枚目には
「犯人はいまだに捕まっていない」
3枚目には
「警察長はなにをしているんだい?」
と訴えかけるのです。
回想シーンなどを踏まえて、いかにこの母親が娘を愛していたかがよくわかり、心を痛むのです。観客は娘が殺された母親に感情移入するのです。
②ビル(ウディ・ハレルソン)
エビングの警察長。2人の娘に恵まれ、家族4人で仲良く暮らします。
しかし、ミルドレッドの挑発に腹を立て、広告を取り下げるよう直談判しにいくが失敗に終わります。
彼には急ぐ理由があったにもかかわらず、決して誰にも打ち明けることもなく自分一人で全て抱え込んでいたのでした。彼は重度のガンに犯されていたのです。
そんな難しい役柄を「ハンソロ スターウォーズ ストーリー」やNetflix映画「ザテキサスレンジャーズ 」やウディ・ハレルソンが演じます。
③ディクソン(サム・ロックウェル)
この人は全編通じてアホが丸出しな警官です
そのうえ差別主義者で黒人を名指しして差別用語をいうような人です。暴力的で後先考えず、行動してしまうため後々大問題を引き起こすのです。
サム・ロックウェルは、本作でアカデミー助演賞を受賞し、他にもディックチェイニーの伝記ドラマ「バイス」でブッシュ元大統領を演じました。
ストーリーを徹底的に語る!
ここからは本作の構成ぽく、謎を紐解いていきましょう。
本作は3部構成で以下のようになっています。
- ミルドレッドパート
- ビルパート
- ディクソンパート
ミルドレッドが主人公で物語の冒頭部分から語っていきます!
なぜこんな分け方をするのか、それは最後までお読みになるとわかるでしょう。
ミルドレッドの物語
娘をレイプされ殺された母親ミルドレッドの奇行が坦々と描かれます。
娘を失った苦しみは理解できるが、あの看板は倫理的に良くないと神父が忠告にくるも、跳ね返し、クレームを入れに来た歯医者には復讐として徹底的に攻撃します。
彼女のドが過ぎた行動にまわりがあたふたする様子がはじめのパートで描かれ、彼女のすること全てに警察は悩みます。
次はビルに徐々に焦点が当てられ、ミルドレッドに変わって物語の語り手になります。
ビルの物語
ミルドレッドの行動に歯止めがきかなくなる頃、ビルはついにガンで倒れます。
一回立ち直ったが、最後は拳銃で自らの生涯を閉じてしまいます、最愛の娘と妻を残して。彼の死に際の演技には迫力があり、見ているものは涙するでしょう。
それくらい本作の中でも重要なシーンであり、感動を呼ぶシーンでもあるのです。
町のみんなから慕われ信頼を得ていた所長の死は町民には痛すぎるダメージで、特に他の同僚は泣き崩れるのでした。
彼は死ぬ前、妻、警察たち、そしてミルドレッドに手紙を残していたのです。それを貪るかのように、涙しながら読むのでした。
それらの手紙は亡くなった後、ナレーションとしてビルが読み上げるのは圧巻なシーンです。
そんなことがあろうと一切意識を変えようとしないミルドレッドでしたが、ディクソンは違っていました。
こうして、最終章の主人公ディクソンへとバトンは受け継がれていくのです。
ディクソンの物語
ディクソンというキャラを頭が悪いなあと思うシーンが本編通じてよく出てきます。さらに暴力的で差別主義者でもあるためどこも好きになるところがありません。
こういうキャラは映画の中では常に嫌われ、敵役に存在する場合が多いですよね
結局ビルが自殺したことで自信も自暴自棄になり、警官の立場ながらミルドレッドの看板を請け負っていた会社の社長に殴り込みにいき、2階から突き落とし暴れまわるのです。
もうメチャクチャです。
当然ながら警官をクビになってしまいます。しかしここから事態は再び思わぬ方向に変わっていくのです。
ビルが亡くなる前、ディクソンにも手紙がありそれを読むため深夜の警察署にいくのです。
ここでヤツが行動するのです。
本作のトラブルメーカー・ミルドレッドです。
完全な偶然なのですが、怒りが収まらない彼女は警察署に火を点けたのです。警察署の中にいたディクソンはかなりの火傷を負い、後遺症が残るまでひどいものでした。
エンディング
火傷を負ったディクソンは病院に送られ、ある光景を目の当たりにします。
横の病室にいたのは自分がボコボコにした看板屋の社長であり、自分と同じように包帯でぐるぐる巻きになっていたのです。
目の前の人にされたにも関わらず、彼は自分にオレンジジュースを与えたのです。そんな彼を前にディクソンはいままでの行動を悔いるかのように、泣き崩れるのです。
後日、職なく後遺症で苦しむディクソンはバーに行きます。そこでも彼は他の人に喧嘩を売り、返り討ちにあいボコボコにされます。
実はこの後に衝撃のラストがあるのですが、その前に本作が僕ら観客に訴えかけている本質を探っていきたいと思います。
「スリービルボード」が各方面で大絶賛された理由とは!?
ゴールデングローブ賞では最多3部門を獲得し、90回アカデミー賞では、主演女優賞と助演男優賞をとりました。
ではなぜ四方八方から絶賛の嵐なのでしょうか。
はじめに単純に理由なく映画として楽しめます。見ていて次になにが起こるのだろうという
予測が極めて困難な映画です。
観客として次はこうなるであろうという大体の予測が数分後には全く違う方向へと向かっているのです。そのすぐ後にはまた予測も付かない方向へ動かされるのです。
次のシーンの展開が全く予想ができない
というのが本作の魅力のひとつです。
そして本作最大のテーマが最大の魅力になっています。
人間は見た目や中身は簡単にはわからない
そして、先入観などはいとも簡単に崩されてしまうもの。
ということが本作の全てであると思います。
物語が進んでいくうちに
キャラクターへの先入観が見事にひっくり返るのです。
観客としてこの映画を分析すると
ミルドレッドはレイプで娘を殺され、かわいそうな母親ということもあり観客は彼女目線で映画を捉えようとしまう。でも彼女の行き過ぎた行動に徐々に観客は距離置くようになったでしょう。
ビルは町の警察長としてみんなからの信頼がありますが、一つのレイプ事件を解決できないことからあまりいい印象ではありません。しかし、彼が自殺する前後から彼に対する感情は180度ガラっと変わります。
そして、問題児ディクソンです。
彼は差別主義者なうえ暴力的なので誰も彼の肩など持ちません。警察をクビになったあと、放火に会い火傷まで負いますが特に彼に感情などありません。
しかし、最後のバーでの喧嘩には理由がしっかりあったのです。ひとりでお酒を嗜んでいると、後ろの席から聞き覚えのある話が飛び込んできます。
ミルドレッドの娘が殺されたときに近いような話をしていたので、なんとしても捕まえてやろうと、そいつのDNAを得るためわざと挑発したのです。
顔が後遺症でぐちゃぐちゃなうえ、さらにボコボコにされる彼は正直耐えられませんが、必死にクソ野郎は踏ん張ったのです。
結局そのDNAは検査の結果犯人とは一致していませんでした。その事件当時その男はイラクに従軍していてアメリカ国内にいなかったのです。
ミルドレッドにそれを話したディクソンですが、二人は納得できず復讐にいくことを決意します。
そして車の中でミルドレッドはディクソンに警察を放火したのは私であるといままで決して自分の非を認めなかった女が白状したのです。
Who the fuck else would have done this?
(お前以外の誰がやるんだ?)
とディクソンは言い返し映画の幕が閉じます。
この華麗な返しは個人的に一番すきな言葉ですが、ディクソンの性格を同時に垣間見ることできます。
ここで映画の幕が閉じるためその後どうなったかは誰にも分りませんが、彼らがわざわざアイダホ州まで行くのは無駄足であったと推測します。
事件が起きたときはその男は国外にいたので、2人は単に人を殺しにいったように思えるのです。
そんな空回りさえもあのふたりの行動なので、面白く思えるわけです。差別主義者で暴力的なディクソンでさえも映画が終わってみると愛情が謎にわいてきます。
最後に
看板はなにかを宣伝するために使われます。
しかし、誰もその看板の裏を見ようとは思いません。まさに人間は看板のようなものだ、と比喩的な表現を看板に置き換えるとできるのです。
そして、3つの看板はもちろんあの3人であり、
やっとここで「スリービルボード」の真意を理解することができたのではないでしょうか。
そして、本作は性差別などいま世界中で問題になっていることへの静かな怒りを表明しています。こんな静かな怒りほど怖く思えたことがないくらい本作の影響力を僕は受けています。
びぇ!