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アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

韓国映画『哭声/コクソン』あらすじ感想:耳を澄ましてごらん 死神の声が聞こえてくるよ

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20世紀フォックス
山々に囲まれ渓谷の麓にある田舎街で、ある日信じられないことが起きる。ゾンビのように腐敗し切った遺体が警察に回収され、すぐさまその噂は町中に広がった。
同様の事件が立て続けにひとつの街で起き、ついに住民も動揺を隠せないでいた。
 
すると街の人たちは、変な噂話をそこら中でするようになる。それによるとつい最近この近くに見知らぬ日本人が引っ越してきたと。
その人が町にきてから、変な事件が多発した、犯人は絶対あいつしかいない。
 
ある田舎町を舞台に、連続して起こる不変死の原因と、突如現れた謎の日本人の正体とは?
 
住民の不安はやがて怒りに変わり、単なる噂話が本当の真実に移り変わる‥
 
衝撃の結末に韓国国内に激震は走り、大ヒットを記録した本作を紐解く。
 
「哭声/コクソン」(곡성(哭聲))を観てみよう。
 

ある日人が死ぬ、これは?

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ある田舎まちで巻き起こる謎の事件を解明するひとりの警官が主人公。娘と妻と母と一緒に住み、おっとりした性格の持ち主だ。
大人負けしないほどズカズカと物を言う娘はとにかく頭の回転が早く、将来が期待できそう。まだ6歳ほどの娘がいい歳した父親を論破し、困らせる。
 
本作はミステリー&サスペンスなので、終始険悪でどんよりした雰囲気が流れるが、娘と父親のコントだけはニヤニヤしながら見てしまう。
主人公の警官はあのちょうどいいボンクラ感と鈍臭い感じがとても最高。妻と車の中でセックスしてるとことを娘に見られてしまい、6歳の女の子に"気にしないで!"と慰められる。
 
どっちが父親で娘なのかわからなくなってくるほど、たまに立場が入れ替わる。さらに同僚の警官にまで臆病で女々しいと罵倒されるわ、娘までにも情けないと言われる。
そのどうしようもない感の漂う警官がついに本気をだすときがくる。
 
娘も誰かに洗脳され、ついにこの町に呪いが存在すると確信を得た父親は、数人の仲間を連れて森へ駆り出し、その日本人とやらが住んでいる奥地へ向かう。
普段は誰にも頼りにされない男が愛する娘が取られると本気になる。そこのギャップと熱意がひとつの醍醐味になってくる。
そして聖書からの引用から本作の幕をあけるその謎感。
 

キリストとコクソン

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"人々は恐れおののき霊を見てると思った。”
"そこでイエスは言った。”
"なぜ心に疑いを持つのか?”
"私の手や足を見よ。”
"まさに私だ。触れてみよ。”
"この通り肉と骨もある。"
「ルカによる福音書」24章37~39より 

こんな謎の宗教じみた文章がヅラヅラ書かれた冒頭から本作ははじまる。その言葉の通り本作は宗教映画だ。
キリストの話をアジアに置き換え、本作に登場する人物たちは全て聖書に出てくる登場人物に文字られ、アジアで聖書の中で描かれたお話が再現された、といった感覚 

韓国の映画を見ていると、韓国人がいかにキリスト教を信仰しているかがよくわかる。パクチャヌク監督の「渇き」では、ヴァンパイヤになった神父が主人公だし、Netflixドラマ「アルハンブラの宮殿」でも教会のシーンがたた出てくる。 

結婚式はチャペルで挙げ、葬式はお寺で行う独特な文化を持つ日本とは違い、韓国ではキリスト教の教えが根強く残っている
韓国のドラマや映画を見ていると自然に感じることだが、実に興味深い。
聖書からの引用からはじまる時点で、迷宮映画感満載だったが、この映画は正式な答えが存在しない。 

観客のなぜ?を解決するために、気を使ってヒントを監督ははじめに提示してくれた。本作「コクソン」についてのネタバレや解説に関しては他のブログで丁寧に解説してくれていたものがあったので、それを参照してください。
 
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キャストと監督

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「チェイサー」や「哀しき獣」のナ・ホンジン監督が脚本と監督を務めた。
過去2作品では裏の組織絡みのサスペンスドラマをスピィーディーかつドラマチックに描き韓国国内でも数々の賞を受賞した。
本作で感じるバイレンス描写とサスペンスならではのゾワゾワ感は、常に予測不可能なジェットコースターのようで、見終わった後の乗り物酔いは変わらない
 
ただ前作などと圧倒的に違う点は、終わり方が全くスッキリしないのだ。監督自身これをスッキリさせようとも思ってもいないらしく、胸のモヤモヤ感が止まらない。
前2作に関しては、韓国人がいかにも好きそうなバイオレントサスペンスでとくに印象は残っていない。
けど、観客に解釈を預けるという、意図的な諦めが映画の表現として斬新だし、結末を迷宮入りさせたのが、旬でもある。
 
謎の日本人を演じた國村準は外国人史上はじめての青龍映画祭(韓国の映画祭)で助演男優賞を受賞した。
同年の青龍映画祭ではカンヌ映画祭で脚光を浴びた「お嬢さん」や、「JSA」などで知られるイ・ビョンホン主演の「インサイダーズ/内部者たち」と競い合いナ・ホンジン監督が監督賞に輝いた。
主人公の警官は、「傷だらけのふたり」のクァク・ドウォンが演じた。「国際市場で逢いましょう」のファン・ジョンミンまで出演するほどの豪華キャストが脇に揃える。
 
最後まで予測ができず、なにが起こるのか全くわからないまま映画が終わった本作。観客にその結末は委ねるというように、実際にみてどう思うか感じて欲しい。
 
びぇ!