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名作映画『アラバマ物語』を徹底的に考察&解説!【あらすじ感想ネタバレあり】

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こんちくわ!Shygonです!

今回は名だたる名作が登録されているアメリカ映画商標の中でも、いまだに多くの人に愛されている映画をご紹介したいと思います。

 

アラバマ物語 

 

1962年製作の本作は貧困層が多く住み、いまだに人種差別が根付いているアメリカ南部を舞台に、人々の葛藤を描いています。

 

サクッとあらすじ

人種的偏見が根強く残るアメリカ南部で、白人女性への暴行容疑で逮捕された黒人青年の事件を担当する弁護士アティカス・フィンチの物語。

 1930年代、アラバマ州の架空の田舎町メイカムで暮らすお転婆なジーンと兄のジェムのフィンチ一家。スカウトとジェムの人生の転機となった3年間を綴っている。

妻と死別した父親のアティカスは公平で穏やかで親身で、その知性と人柄で周囲から篤く信頼されている町の弁護士である。

父の弁護士としての仕事を通し、人種差別、町にはびこる悪、貧困の悪化などを学び成長していく。

引用元Wikipedia(アラバマ物語 - Wikipedia)

 

主演はアメリカを代表するグレゴリー・ペッグが弁護士の父親を演じ、無実の黒人の弁護を担当します。

 

他にもゴッドファーザーなど後に多くの有名映画に出演するロバートデュバルが映画初出演しているなど、興味深い作品です。

 

では、様々なカテゴリーに分け、この作品を存分に語っていこうと思います。

 

 なぜ未だに評価される名作なのか!?

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©Universal Studio

まず本作一言で表すと

正義、人種など人類の永遠な課題を、決して堅苦しい知識人がツラツラと解決していくのではなく、身分や人種が違う人達も含め様々な視点からそれらの課題を捉えようとしています。

どうしても裁判ものでは頭のいい人達が理論を並べ、物事の完全解決をしてしまう方向にどうしても行きがちなのです。

映画に関わらず、題が本作のように一筋縄で解説できなくなるといつも上記のように天才たちが登場し、僕らを惑わしがちなのだと思います。

 

しかし、これが人種差別が根強く残るド田舎に舞台が移ります。するとどうでしょうか。一気に僕らの感覚が変わります。

さらに、これに子供も一緒にこの討論会に参加するのです。実際には参加はしませんが、子供から見た裁判というものも忠実に描いているのです。

 

これは悪く言えば話がグチャグチャになりかけなのです。

いつもの僕らの感覚では国を代表する頭脳の持ち主たちが都市部に集結し、そんな永遠の人類の課題の解説に奔走します。

 

ほとんどの方がこのような物語展開に馴染みがあり、こちらの方を好みます。

ですが、実際はそんな方法では解決ができないのが現状であり、最近徐々に世界が変わりつつあると思います。

このような重たい課題含め、どんなことも決して1つの視点から解決するのはとても難しいのを僕ら人類はやっとわかってきました。

 

この映画は

50年以上前に製作されているにも関わらず

当時の常識にとらわれず

身分、人種、年代の色々な視点から

あるひとつの事件を語っているのです。

 

これはあくまで僕個人の意見ですが、何十年も前に様々な視点から物事を捉えようとする映画が他にあるのでしょうか。

そんな未来的な思考を持つ映画は何年経とうと人々の心の中に残り続けると思いっています。そんな数少ない魅力的な映画こそがアラバマ物語なのです。

そして、最後に成長過程において、子供ならではの心の葛藤というものがこの主題

アラバマ物語(原題:To kill the mockingbird)に直接繋がっていくのです。

 

次は視点ごとにアラバマ物語を語り尽くします!

 

 視点ごとに異なる物事、アラバマ物語

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 弁護士の視点

この視点は物事を冷静さつ論理的に捉えます。弁護士という職業柄からの感情論は一切ありません。

主人公を演じるグレゴリーペッグは二児の父でもあり、妻に先に絶たれたこともあり、一家をひとりで仕切っています。

父として、弁護士としての2つの顔を持ち、物語はこの視点から語られますが、大部分を占めていないというところをこの作品の魅力かと思います。

 

人種差別に屈することなく、事件の真相を求め解説に奔走します。しかし、黒人をかばっていると批判を買い、街の白人層から反発を受けることになってしまうのです。

単に事件を解決しようとする刑事映画ではなく、それ以上に色んな要素が混在するのです。その大きなひとつの要素として人種間に残るのが差別なのです。

 

 貧困層かつ黒人の視点

この物語の本質的な部分に直結する事柄です。黒人というだけで、感情論に落ち潰され、多くの人の心の中で、本質的な部分の追求に邪魔が入るのです。

舞台が人種差別の残る南部というところにもこの作品の抱える大きな要因が隠されていると感じます。

上記に示したように人種の違いというだけで人々は正常な思考回路ができなくなってしまうのです。

 

そして、貧困層という点です。この地域では歴史的な背景(1930年代の世界恐慌)の影響で、村のほとんどが貧困層なのです。

映画の冒頭では、お金でお礼ができないとして、隣人が自分が育てた農作物を渡しにくるのです。

とても温厚な人柄であり、貧困でもそれに打ち負けず、行きていく姿を描いていたが、結局物語の最後でその彼こそがこの事件を起こしたであろう張本人であったのです。

何気ない田舎村の一部分の裏には、そんな村社会の垣根を超えて根付く問題があったということです。

 

 子供の視点

本作の面白い点の中でもココを無視しては語れません。裁判ものなのにも関わらず、父親の周りの意見に惑わされない人柄を子供たちは彼らなりに考え、理解しようとするのです。

なので、刑事事件を扱うお話なのに初めからちょいちょい子供の視点から学校なり、遊びなど考えていること全てを裁判とともに同時進行で語られるのです。

はじめは訳も分からず、只々流れるのですが、物語が進むと同時に彼らの生活が徐々に浮き彫りになり、その重要性を僕らは目の当たりにするのです。

 

そして、彼らなりに本作を理解し、彼らなりの答えの出す様こそがこの作品の最大の魅力かもしれません。

冒頭シーンで子供たちの好きそうな逸話を元に子供時代の朗らかな生活にホッとするが、その彼らが恐れるブーという人間がオチに直接関わり、一見子供の何気ない生活感もが本作を語る際に直接関わってくるのです。

そして、原題"To Kill the Mockingbird"の真相も彼らの心の葛藤と関わりがあるのです。これに関しては一番最後に言及します。

 

 時間が経っても伝え続ける本作のメッセージとは!?

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©2018 Tons of Facts

正義とは? 平和とは?

などいくら時間があっても解決しきれない事柄をある一部の人間が考えるのではなく、様々な人種、性別、そして年代の方たちひとりひとりの視点を忠実にかつ写実的に描いています。その中で、個人個人が自分なりに理解しようとします。

 

例えば主人公の弁護士は感情に一切振り回されず論理的に物事を捉えます。

彼はトーマス・ジェファーソンが唱えた米国建国当時から唱えられる、全ての人間は生まれながらに平等である(All men are created equal)を元に真実を暴こうとするのです。

そして、子供は小さいなりに必死に考え物事を理解します。周りの脅しに屈さず、ひたすら真実を暴こうとする父の敗北に我が同然に落ち込む彼らにひとりの女性がこんなことを囁くのです。

 

世の中には楽しくない仕事をする人も必要なの。

そのうちのひとりがあなたの父親よ

 

と。

これは大人にとっては本質的な解決策にはなりませんが、彼ら子供にとってはとても重要なことであり、このようなことを乗り越えてこそ大人の人間へと成長していくのです。

最後に本作の原題To Kill the Mackingbirdの示す意味とはなんなのかです。上記のように、人種差別のが残る社会においての正義を様々な視点で描いています。

しかし、この物語は実は他にも子供のたちの成長においての心の葛藤も読み取れるように思えるのです。

例を挙げると、あるシーンにおいて、野良犬を銃で退治する父親に子供たちがショックを受けてしまうのです。

その会話の中で、モノマネ鳥(To kill the mackingbird)は美しい声を出すし、害がないから殺すなという父親は人間へ害野良犬ある野良犬はいとも簡単に殺してしまうのです。

 

小さい子供にとって害のあるものは殺していいのか?

 

ということに疑問を感じ、成長とともに心の葛藤があるのです。

本作は50年以上前に作られたものなのにも関わらず、いまの現代社会を生きる僕らに対して多くのメッセージを送り続けているのです。

それが数十年経とうが、変わっていないというところにも映画という芸術が持つ魅力を感じます。

僕はアメリカの大学に通っていて、2018年夏にアメリカをヒッチハイクで横断した経験があります。

本作の舞台になったアラバマ州にも足を運びましたが、この現状が改善されたとは言い難い状況が今でも続いています。

 

筆者の意見はこのブログで古い映画を見るよう主張し続けます。現代において、趣味の多様化によって映画を好んで見る人が減ってきているように思います。

さらに古い映画に対して、多くの人は映像が古いという理由だけで見るのを拒むのです。僕はそんな人達を決して批判はしませんが、とても悲しいのが正直な気持ちです。

僕個人の意見として、毎年日本だけで300〜400本の映画が劇場公開されるのに、50年以上前に作られたものがまだ人々に愛され、残り続けているのです。

少し考えてください。毎年多くの新作が世に出回っても、残り続ける映画の凄さを知ってほしいです。

そんな長い間人々の心の中に残り続け、今現代を生きる僕らが実際に手に取って感じることができる。

 

その数少ない名作の一本として常に挙げられるのが、本作『アラバマ物語』なのだ。

 

びぇ!

 

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