Movie Magic

アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

トイレを使いたいと叫ぶホームレス、追い出そうとするカフェ

homeless people sitting on chair at cafe

顔を見上げきれないほどの高層ビルが立ち並び、多くの人でごった返すサンフランシスコ。北カリフォルニアの長閑な田舎街に住む僕にとっては普段の生活からは想像もできない数の人とモノに溢れるこの大都市に毎度驚かされる。

AppleやGoogleなどいまをときめくIT企業が密集するシリコンバレーなどで知られ、街を歩けば自分が浮いていることを毎回痛感させられる。自然豊かな田舎街でほぼ隠居生活をする人間に居場所なんて無いぞ?そう言われている氣がするほど、アメリカの大都市は敷居が高い。

サングラスにブランド物のバックを垂らし、まるで街中がランウェイなのかと勘違いするほど、歩いている人はモデルのようで、ここでも僕みたいな人間には入場制限がかかってしまっているようだ。

今回は田舎者が世界有数の大都市に行ったらどうなるかなどというYoutubeの企画ではなく、僕が感じたことを書き残しておく。

 

これは田舎感丸出しの小僧がイキってカフェでパソコン作業をしようとした矢先に起きた話である。カフェでゆっくり腰掛けながらパソコンを開いていると、黒人のホームレスの人がレジの前で何かを叫んでいた。

よく聞いてみると、「トイレを貸せ!」とカフェの従業員に怒鳴り散らし、取っ組み合いの大げんかに発展していた。ボロボロのビニール袋を指差しながら、着替える場所がないから、トイレで着替えたいんだよ、だからトイレを貸せというのが彼の主張らしい。

 

だが、カフェ側は何かを買わないとカフェのトイレは使わせないから、出て行け。そう主張している。その男性の白Tシャツは原型を留めてないほど汚れており、色んなモノが詰まったビニール袋に両手が塞がれ、肩には大きなスピーカーが吊るされていた。

アメリカに住んだことがある人間でなくても、すぐにわかる典型的なホームレスの格好をしており、彼らのような人たちに店を使わせないために、トイレには暗証番号が必要で、その度に従業員に聞かないといけないようになっている。

場所にもよるが、アメリカではこの光景が割と普通であり、それほどホームレスが引き起こす問題に店が悩まされる。従業員が口で説得を試みても、埒が開かないので、マッチョな男従業員2人が力づくでそのホームレスを追い出そうとちょっとしたプロレスが開催されていた。

 

静粛なはずのカフェは一瞬にしてFワードが飛び交う異様な雰囲気にガラリと変わり、ほかの客たちはまるで何もなかったかのように透かした顔をしながら、平然を装いコーヒーを嗜む。一見心無い人達に見られがちだが、アメリカではこの光景は至って普通なことであり、人々は毎度のようにそんな人間に構ってられない。

そして、ホームレスは決まって黒人であり、ボロボロの服装をして、なぜか必ずデカいスピーカーを持っている。白人やヒスパニックのホームレスでスピーカーを持ってる人はあまりいないのに、黒人は決まってデカいスピーカーを持ち歩く。自宅を持たない放牧民のような生活をする彼らにとって荷物をいかに減らすかは重要な問題なはずなのに、スピーカーは必須リストにあるようだ。

世界を動かす巨大IT企業が挙って集まる魅力的で先進的な街である反面、サンフランシスコが抱える闇はほど知れない。全米でも有数のホールレスが存在する街であり、Forbesの調査によるとサンフラは全米主要都市の中で7番目にホームレスの数が多い。補足でホームレスの全米ランキングTop10のうち4都市がカリフォルニア州が占めており、世界をリードする州の隠れた闇が浮き彫りになっている。

表舞台では豪華な建物に華奢な服装に身を包まれた一部の人間が生活するが、少し裏舞台をのぞいてみると、そこにはあたり一面に広がる無法地帯と悪臭が漂ってくる。最近に日本では薬物関連で芸能人が軒並み摘発されているが、ドラックが社会を悩ましているのは日本に限らずアメリカも変わらないことなのかもしれない。

 

芸能人をはじめ一般人にも麻薬の逮捕劇が連日メディアを沸かしているようだが、私たちが思う以上にドラックは生活の一部にまで浸透しているのかもしれない。そんなことをふと思いながら、久しぶりに遥々日本から来た父親が横で大きな音を鳴らしながら眠っている。

そんな何もないあたりが静寂な午前3時。Meek Millの『Dreams and Nightmares』を聴きながら寝床につこうとするが、まだ眠れそうもない。静粛な場所のカフェで大きな物音を立てて騒ぐ低所得者の人間はいつも決まって大衆の敵になり、生きる場所を探し求めて、僕がこうしてホテルで寝床につこうとしている時にも、凍える寒さの外でウロウロしているのだろうか。

そんなことを頭の片隅に置きながら、人間がゴミに見えるほどの高さから傍観している。これこそまさにSeen my dreams unfold, nightmares come true