Movie Magic

アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

数年にわたり追ってきた『ゲームオブスローンズ』が遂に終わりを迎えた。

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強い脱力感と空虚感に駆られる。

これまで生きる糧となっていたのもが、突然目の前でなし崩しになり、崩壊する。2011年から始まった『ゲームオブスローンズ』は2019年のシーズン8をフィナーレとして8年間続いた長い冒険にピリオドを打つ形となった。

可愛い子役たちも、すくすく成長し、シリーズが更新されるたびに大人びて、その過程を楽しむのも今思えばひとつの楽しみだった。やっと心の整理ができたので、いま僕が想うことをここに書き残しておく。

 

HBOが史上最も高額な予算を投じ、これまでにない歴史スペクタクルドラマを製作してきた。シリーズが更新されるたびにメインキャストのギャラはうなぎ登りで上がっていき、最終的には1話に1億を超える額を受け取っていたらしい。でも同時にそれほど人々の注目を受けるし、期待される。

ドラマのロケ地になれば、その場所に観光客が群がるようになり、『ゲームオブスローンズ』用のツアーまで出来ていたという。これほど世界中を熱狂させ、話題になったドラマは他にない。このドラマはもうドラマの域を超えて、独自の世界を持つ。

『ゲームオブスローンズ』を本気でオススメする理由7選でも、このドラマの魅力をふんだんに語ったが、本作のあらすじは、〈鉄の玉座〉を巡り様々な勢力が衝突し、その席に座る日を夢みて生死をかけて戦う。

彼らの中にはいろんな人種・宗教が存在して、共存や衝突を繰り返す。でもそこには必ずドラマがあり、キャラクターの亡くなれば、最愛の人を失うかのように涙を流し、嬉しいことがあれば親友のようにその喜びを分け合う。

 

ドラマや映画はいつの時代も人々を熱狂させ、常にこの腐った世界から現実逃避できる場所であった。でも映画やドラマは終わってしまうと、急にもといたこの世界に呼び戻されるし、エンドロールが流れはじめると残念な気持ちとやるせない気持ちが同時に込み上げてくる。

でも、この『ゲームオブスローンズ』だけは特別であった。エンドロールが流れはじめても、次はあるし、まだスタークたちの横で僕が戦っているような気がしていた。共に剣を振りかざした仲でも、終わってしまえば、一緒の席で盃を交わす。

これほど現実世界をきっぱり忘れて、別の世界に入り込み、エピソードが終わっても、彼らの横で笑っている錯覚に陥らせてくれる作品はこれからいくつあるのであろうか。

 

幼少期に両親が買ってくれた機関車トーマスの木のレールを繋ぎ合わせて、一日中電車を走らせていたのをふと思い出す。あれほど熱中し、時間を忘れるほど没頭したのは、あの限られたときだけで時間の概念を飛び越えて別世界に存在していたからだと思う。

僕らは1時間後にこれをし、明日はどこにいくなどと、時間主体の時間に縛られた生活を日々送っている。そんな決まった枠組みの中から唯一脱出できる術が”芸術”だと僕は信じている。

この”芸術”はダリが描く絵やヴイスコンティの映画、ヴィヴァルディの音楽などではない。熱中できる=芸術と考えると、僕が幼少期に没頭していたトーマスだって僕の中では芸術になる。

 

多くの人にとって『ゲームオブスローンズ』は単なるドラマにしか過ぎないかもしれない。でも僕にとっては全てを忘れて、悟空の瞬間移動なんかを使い、別の銀貨系に行ったような特別なものである。

いつの場面だろうと、運命は受け入れてきた。ロブがレッドウェディングで失意の中、殺されるのだって受け入れてきたし、同じ男としてその生き様に尊敬していたジョラー・モーモントがずっと一途に想っていた女性の胸の内で息を引き取るのも、悲しかったけど受け入れてきたつもりだった。

 

でも、ひとつだけ受け入れられないことがあり、強い怒りを持った。これを訴えるためにいまこの文章を書いているし、届かないかもしれないけど製作者のふたりにいまの僕の気持ちを伝えたい。

あのデナーリスの突然の暴走だけは共感できないし、あれほど積み上がってきた積み木をいとも簡単に崩す姿を見たことがない。これまで女性の鏡として、古くから続く男性社会に突如現れた救世主が変貌するワケないし、あれほど奴隷解放に努めてきた人間がつまらない個人的な怒りに身を任せて、街全体を火の海にするはずがない。

あの展開を見た瞬間これまで自分の身に降りかかっていた魔法が一気に溶け、ドラマの世界観と急に距離を感じた。シーズン8の怒りを綺麗にまとめてくれた記事があるので、興味がある方はこちらへ。

 

常に鮮烈な印象を観客に残し、世界中に熱狂的なファンを世界に残してきた偉大なドラマはこうして奈落の底に落ちていったし、それを見届けるのは正直辛かった。シーズン8の製作をやり直せとファンたちがネットで署名活動をはじめ100万人を突破したらしいが、正直無駄なことだと思っている。もうこれは運命として受け入れるしかないし、シーズン8の急な落下もすべて含めてもこのドラマは素晴らしいドラマだったと思う。

 

そういえば『スターウォーズ』も同じことをやってしまった。1977年にあれほどセンセーショナルな印象を世界に残したのに、シリーズを締めくくる大事なエピソード3ですべてをダメにした。

父親が当時エピソード3を見てがっかりしながら映画館から出てきたのを覚えているとよく僕にいってくるが、当時を知らない僕からするといまいち実感が湧いてこなかった。しかし今回の件であの発言の意図がようやくわかった気がする。

 

2010年代を最大のヒットシリーズMCU作品はまだ僕らを一度も落胆させたことはないよね。シリーズを一旦締めくくるエンドゲームでさえも最高の盛り上がりと興奮を与えたし、これからも彼らの冒険にはついていく。『ゲームオブスローンズ』がした過ちから学び、ぜひアベンジャーズには最後まで有終の美を飾ってほしい。

見終わった後は、長く続いた冒険が終わったことと、残念な結果に正直がっかりしたし、謎の空虚感に心が襲われた。でもこれからスピンオフが何作が製作されるらしいし、ゲースロファミリーはこれからも見守れる。

スピンオフこそはまた熱狂させてほしいし、同じ過ちを犯さないでと、切実に思うばかりである。心の整理が着くまで時間を有してしまったが、これから何を糧に生きてゆけばいいのか。

びぇ!