Movie Magic

アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

イギリスの食事がマズいという迷信

f:id:shygon:20190727190656j:image

最近とても面白い本を読んだ。

その本はお金の歴史から世界史を読み解くといったもので、これまで数多くの文明が消滅してきた中で、その大部分の原因が住民へのとんでもない重税や度重なる戦費がかさむなどだったらしい。

たとえば、歴史をほとんど勉強してこなかった僕はナポレオンは彗星のように現れ、彗星のように歴史の闇に消えていったという認識しかなかったが実は違った。

話はフランス革命の前に戻る。 話の根端としてなぜフランス革命が起きなのか?という話から。

 

住民が重税に苦しみ、民が当時の王政に反旗を翻したというプロットだが、それもルイ16世の浪費癖で商人たちに多額な借金をしていた、だからそのしわ寄せが住民の負担となったみたいな歴史が見えてくる。

知識人からしたら常識かもしれないが、ざっくりとしか世界史を知らなかった僕にとっては、ライブをバックステージから見透かしている感覚になって少し興奮してしまった。

 

18世紀にイギリスが世界初の産業革命に起こし、世界の牽引役として何世紀にも渡って世界をリードしてきたのも、イングランド銀行という当時世界初の国家銀行の誕生が起因している。

そんなお金の歴史から新たな歴史を垣間見れたが、お金が絡むと人間はなぜか醜くみてるのは、現代とは変わらないらしい。

 

あの時代になぜ西洋列国が世界に進出して次々と植民地化し、なぜイギリスが世界の覇権をとることができたのか?

イギリスの巧妙な戦略には正直驚いたが、それ以上にイギリスがいかに最低な非人道的なことを行ってきたのかがよくわかる。

植民地の標的になった東南アジアの国々をわざと内部分裂させ、その間に付け入る、漁夫の利。

もともと対立関係になかった部族同士を対立させるように仕向け、双方が疲弊したあと、救世主を謳って軍事参入し、支配する。

そのおかげで独立したあとも、スリランカは最近まで内戦に明け暮れていた。そんな無責任なことをいっても、英国人はいまでも誇り高きブリティッシュ。

 

さて。

地方のバスで揺れながら、この本を眺めていた。

今回イギリスにはじめて訪れ、これが初のヨーロッパになった。いつもツアーに乗って世界を旅行する祖母が個人で旅行がしてみたい、元氣なうちにいっぱい世界を見たいんだというので、旅行慣れしている&英語がちょっぴしできるという僕が抜擢された。

 

イギリスには僕の親しい友達が何人か留学しているため、嫌でも彼らの情報が耳に入ってくる。

たぶん周知の事実だが、『イギリスのご飯はマズい』という通説。

これは嘘であった。数十年前はどうも本当にマズかったらしいが、2019年現在別にマズいことは決してない。

 

 

30年前、ちょうどイギリスのロックバンドが日本でも流行り、多くの日本人が長髪にKISSのような白塗りで叫ぶ時代、当時若かった母もどっぷりイギリスに憧れを持った若い女性であった。

僕がアメリカの映画に影響されたのと同様に、母はイギリスに憧れていた。周囲がジャニーズに熱狂していた頃、母はひとりデュラン・デュランに熱狂していたらしい。

デュラン・デュランのことをまったく知らない僕からすると、デュラン・デュランという名前だけがひとり歩きし、おそらくKISSみたいな白塗り集団としか想像していなかった彼らを今回はじめて見た。

 

想像より好青年であった。安心した。

ハードロックカフェにいったときは、少女のようにまわりの目を一切気にせず、有名らしい人のギターをみては僕にひっきりなしに説明する。

祖母と僕は口をぽかんと開けながら、その当時をひとり懐かしむ母の横でその話を聞いていた。

彼女は僕のことをイカれた映画野郎呼ばれするが、ぶっちゃけ変わらない。DNAは遺伝する、これはどうも本当らしい。

そんなイギリスウーマンは、20 年ぶりのイギリスで当時の若かりし頃の母親の思い出話でも聞きながら、旅行をしていた。

 

 

30年前は本当にご飯がマズかったらしいので、ふたりの中でひとつの仮説を立ててみた。30年前と決定的に違うことがある。ここでEUが登場する。

EUというヨーロッパを取り巻く巨大な経済圏のおかげで、関税が撤廃し、フランスなどの農業大国から安価で良質の野菜が入手できるようになった。

そのおかげでイギリスにも"食の革命"が起きたのではないか?という妄想をしていた。

もしそれが本当ならEUから離脱すれば、またゲキマズ料理が再び食卓を囲うのか?という震える未来も同時に想像してしまう。

 

そんなジョークは置いといて、なぜ急激に食の質が向上したのか、知ってる方いたらコメントしてくださると嬉しいです。

 

ここでイギリスの嘘か?と思うくらい本当のことを話そう。

イギリスに限らず観光地には多くの言語で書かれた標識をよく見かける。

最近は中国人の世界攻略が進み、どこに行っても中国人&中国語の標識を見かけるようになったが、日本語の標識もまだ負けていない。

そんな世界の標識事情で面白い日本語を見かけたので、共有しておく。

 

f:id:shygon:20190727122709j:image

 

『ようこそ

バーの後ろにもっと席

カンブリア運賃』

 

5・7・5の俳句???

バーの後ろにもっと席でさえ氣になるが、カンブリア運賃はさすがに無視できない。

バーの後ろにも席があるよと伝えたいのは伝わってくるけど、カンブリア運賃はさすがに頭が大きなはてながつく。

 

次はこちら

 

f:id:shygon:20190727122725j:image

 

『いいえ乗降ん』

 

ワーズワースの詩から引用してきたのか?と言わんばかりの素晴らしいポエムだ。

日本人の我らでさえ理解できない感受性と風情を感じるが、そんな言葉の美しさを通り越して笑いが起きる。

 

ひと昔のGoogle翻訳でさえこんなヒドい翻訳はしないのに、どう翻訳したらこうなるのかぜひ知りたいものだ。

でもそれ以上に、これまで数多くの日本人がここに訪れているはずなのに、なぜ誰も間違いを言おうとしないのか不思議でしかない。

 

 

 

僕は基本的に世界との繋がりを映画から求めている。

この前フィリピンを訪れたときは、フィリピンの鬼才ラヴ・ディアスの4時間に及ぶ作品『立ち去った女』をみてから行った。

これは完全に僕の持論だが、その国の映画ほどその国の特色と印象を形つくるコンテンツはないと思っている。

 

イギリスはわざわざ数ある映画から掘り起こさなくても、有名な映画はたくさんある。

007シリーズに最近だと『キングスマン』などのアクション・スパイ映画に、僕のお気に入りのカルト映画『トレインスポッティング』など

『トレインスポッティング』の舞台になった北国スコットランドのロケ地をまわって、ひとり熱狂している自分もいた。

 

映画の世界と現実は違うとよく言う。

アメリカ映画を大量に見ていた当時高校生の僕は、アメリカに行ってみたいと懇願し、いざ行ってみると映画の世界から感じていたアメリカとは少し違った。

イギリスは、ボンドみたいなスーツが合う英国人や、英国人ということにプライドをもつ英国人など、イギリス映画から得られるイギリスの印象はそのまんまであった。

ただ、なぜか違和感を感じる、自分の中でしっくりきた感覚がない。そんなぼんやりした気持ちが渦巻く中、ある田舎の道をバスで揺られながら、先ほどの本を眺めていると突然ハッと氣付いてしまった。

 

イギリスの社会派ケン・ローチが描くイギリスの世界観と僕がいまみている風景が一致した。

ケン・ローチは僕が好きな作家のひとりだが、平凡で風情のある普遍的な田舎を切り取るのがたまらない。

ただそこに眠るイギリス社会への風刺がもっとも胸に刺さる。あれほど有名になったいまでも無名俳優を使うことをやめない彼の映画だからこそイギリスの原風景をそのまま切り取って英国のリアルを描く。

 

壮大なロマン式の歴史的建物なんて彼の映画でみたことないし、あたりに広がる自然美をバックにするのに、最後に残るのは「救いのない空虚感」だけ

なぜかここの部分とイギリスの全体像が僕の中で、がっちり重なり合わさる。これだからロンドンは好きじゃないし、もうできれば行きたくないと感じてしまうのだ。

生理的に無理だったし、僕の偏愛はこれからも角を尖らせいくんだろうな。

 

f:id:shygon:20190727190950j:plain

買う前はこれを想像していたんだ、けど被ってみると全然違うじゃんよ!

そんな薄っぺらいことをつぶやく反面、ドラマ『ピーキーブラインダーズ』のハンチング帽子に憧れ、買ってしまうイキリさ。

そして弟にきっぱり「兄ちゃん似合わないよ」とマジレスされる悲しい兄貴。もう少しましな言い方あったよな?

アメリカの田舎に住んでいるワケだが、こんなん被っているやつみたことないし、絶対浮くよね。

どうでもいいや。

 

勘違いされるかもしれないので、最後の言葉として添えておくが、僕はイギリスが嫌いなわけじゃない。

むしろ好きである。コッツウォルズは本当に綺麗だったし、スコットランドのウィスキー体験は興味深かった。

多くの国を旅行する中で、その国の裏の部分が見えてこない国は不安になる。観光することのよくないところは数日間しかいれないので、いい意味でも悪い意味でもその国の裏に眠る闇はどうしてもみえにくい。

 

ただ今回のイギリスはたった数日だけでイギリスの歴史の闇に埋まった別の英国史をはじめ闇の部分に触れ合う機会がとても多かったのだ。

その国を本当の意味で好きになりたければ、そこの邪悪な部分もすべて受け入れてはじめて好きと僕は言いたい。

母国の日本もアメリカも住むにあたりたくさんの信じられないことや歴史の闇をみてきた。

でもだからこそ僕はこれらの国に敬意を示したいし、心の底から好きと言える。

 

イギリスはたった9日間の滞在で、まだその国を決めつけるのは早すぎるのは自分でも充分理解しているつもりだ。

でも、ひとつの区切りとしてイギリスのいい部分と歴史に埋もれた事実両方を汲み取ることができたし、これで僕のジャーニーは一旦終わりとする。

 あんたは充分な休暇をとったから、自分のやるべきことをしなさい、イギリスを背にそんなことをいわれながらヒースロー空港を送り出された氣がする。

はい、勉強しますよ。

 

びぇ!