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映画「ビューティフルボーイ」 感想ネタバレ : 依存症の息子と父親の感動の実話とアメリカの現状

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©2018 Amazon Studio

こんちくわ!Shygonです!

今回はアマゾン製作の話題の新作

ビューティフルボーイ

を熱く語ります!

2018年に製作された本作は実話の本を原作に父親とドラック依存症に苦しむ息子の家族物語です。

トロント映画祭に出品された本作は観客から大絶賛の喝采を浴びました。

 

サクッとあらすじ

フリーランスのとして働くデビットは3人の子供に恵まれ、愛する奥さんに囲まれて幸せな生活を送っていた。

長男のニックは順調に学校生活を送り、豊かな自然のもと、すくすくと育っていく。

やがて高校生になり、お酒や女性を経験するなど大人へと成長するニックは進路について考え始める。

秀才でもあったニックは進学することにするが、興味本位で始めたドラックで自分の意識が徐々に失われていくのであった。

 

デビットはその異変に気付き、息子ニックを施設へ送り、依存症から抜け出すように試みるが、そんなことは既に遅く彼は完全な依存症へと豹変してしまっていた。

それでも諦めないデビットは失踪したニックを探すため、各地へ繰り出す。

デビット以外の人間は完全に諦め、ニックからは距離を置きはじめるが、彼ひとりは諦めず、彼の救済を心待ちにしていた。

 

そんなデビットをも諦めさせるほどのドラック クリスタル・メスは完全に人間を壊し、滅亡させ、ニックはみるみる人間の理性を失い始める。

ドラックの怖さを再現するキャストの演技、それが現実世界への風刺にもなる本作は感動の父親と息子の物語!!!

 

製作の背景

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©2018 Long Reads
実物の父親デビットと息子ニック

 撮影期間はなんと7ヶ月

普通映画を撮影するときは準備段階に時間をじっくりかけ1〜2ヶ月の撮影期間を要します。しかし、何回も撮り直しをしたり、俳優の減量期間を必要として計7ヶ月かかりました。

さらに監督の意向でハリウッドでは珍しいリハーサル期間を充分に設けました。

 ティモシー・シャラメの覚悟

2017年に公開された「君の名前で僕を呼んで。」での演技を大絶賛されたティモシーは若干21歳でアカデミー主演男優賞にノミネートされました。

本作ではドラック依存症に苦しむ青年を演じるため撮影には18ポンド(8キロ)の減量をして撮影に臨みました。

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  単なるコメディ俳優から躍進

本作で父親を演じるのはスティーブ・カレルという俳優です。

彼は「40歳の童貞男」などタイトルから察するようにめちゃくちゃくだらないコメディ映画に出ていた俳優でしたが、スポーツ界の最大のスキャンダルを描いた「フォックス・キャッチャー」からは実力派俳優としても活躍しており、「バイス」では実在する政治家を演じました。

 2つの視点から描く

本作は原作の本をもとに作られています。

父親であるデビット・シェフの”Beautiful Boy”と息子ニックの”Tweak”を原作に父親と息子の両方の視点から物語が構成されています。

 

凄まじい現実の連続

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©2018 Amazon Studio

これまでも数多くの映画がドラックやアルコホール依存症を扱い凄まじい映像と迫力のある俳優たちの演技が毎作話題になりますが、本作でのドラック依存症を演じた

ティモシー・シャラメの演技は

 

破壊的で凄まじい描写を体当たり演技

 

で作り上げています。

これは本当に

 

依存症で演じているんじゃないかと

錯覚するほど本物の依存症を

みているような感覚

 

僕はアメリカ全土を旅して多くのドラック依存症の人たちと会いましたが、まるで本物かとガチで思うほど凄まじい演技力を魅せています。

次に、ドラックに侵された息子の豹変する姿みても懸命にサポートする父親デビットの心強い姿は見ている人から絶大なる共感を得ています。

実生活でも14歳と17歳の2人の息子をもつ彼は自身の経験をもとに本作の撮影に臨みました。

 

SHYGON的批評

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©2018 Los Angeles Times

アメリカでもドラックの首都と言われるほどサンフランシスコでのドラック問題は社会問題に発展しています。違法薬物が普通に流通しており、そんな現実を本作から垣間見れます。

自宅から失踪した息子ニックを探し出すため、父親のデビットがサンフランシスコに出向きますが、そこに映し出されるのは道端でラリった若者がそこら中に寝そべっているのです。

 

それはまさに生きる地獄ですが、それがサンフランシスコの現実なのです。

ドラックに侵された息子ニックはその後リハビリ施設にいくときになりますが、回復することなくまたドラックを探してあたりを徘徊する生活を送るのです。

人を裏切り、自分に嘘をつき、昼間からドラックに浸るニック

映画の世界だけに一瞬見えますが

 

これがアメリカの現状

 

なんだと本作は訴えています。

 

本作の特徴として父親と息子の双方の目線からものがたりが語られますが、父親からの目線では過去の幸せな日々がフラッシュバックするかのように差し込まれ、どんどん地に堕ちてゆく息子ニックを対比して描いているのは強烈な印象を観客に与えます。

 

父親の前に久しぶりに姿を現したニックはお金をせがみにきますが、そのときのニックに自制心など程遠い言葉になってしまっていたのです。

久しぶりの親子の会話でこんなことを話しています。息子ニックがお金をほしいと言われた父親デビットは彼に、

 

"おまえはいま話していない。"

"ドラックが話しているだ。"

 

と。

日本でどう翻訳されるかわかりませんが、僕個人の見解からこの言葉がものすごく刺さりました。

ドラックに浸り続けている息子はもう本当のニックなんかじゃなくて、ドラックに魂を奪われた人間の形をしたものなんです。

 

本作では史上最悪のドラッククリスタル・メスに依存するひとりの少年が描かれますが、腕への注射で腕に凄まじい跡が残ったりと目を背けたくなる現実の連続ですが、それがいままさにアメリカで毎日のように起こっている現実なのです。

社会問題への風刺については次の章で語りますが、クリスタル・メスについて描いた大人気ドラマ「ブレイキング・バッド」の解説もご覧ください。

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アメリカの現状を浮き彫りする本作

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©2018 Variety

実話がもとになっている本作ですが、その後父親の懸命的なサポートが功を成して見事に息子ニックはドラックから脱却します。

しかし、ボロボロに壊れたニックの腕は見るに耐えない注射の痕が散在しており、非常に心が痛みます。

その後彼は二度とドラックはしないと決断し、それから8年間ドラックと距離を置くことができているのです。そして、最後にこんな言葉を残して映画の幕が閉じます。

 

いまアメリカでは

ドラックでの過剰摂取が死因No.1であり、

1分間に50人もの人がアメリカだけで亡くなっているのです。

いまみなさんがこの記事を読んでいる最中にも大勢の人がドラックのオーバードーズで死んでいるのです。

 

それは紛れもなく違法な薬物が非常に安易に手に入るということ政府がこの深刻な問題に無関心であるということが挙げられます。

僕は2018年夏にいまのアメリカの現状を自分の目で確かめたいと思いアメリカ横断の旅をしましたが、その数字は真実であると信じています。

それほどいまのアメリカはひどいということです。

 

そんな現状に真っ向から反抗し、実話をもとに作られた本作ほどメッセージ性のある映画は他にありません。

いまのアメリカの現状浮き彫りに描き出した本作がアカデミー賞ではどう評価されるのか非常に楽しみです。

びぇ!

 

 

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