Movie Magic

アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

映画『プライベートウォー』あらすじ感想ネタバレ:片目戦場ジャーナリスト メリーコルヴィンの伝記映画

poster of movie A private War

いま世界で何が起こっているのか?

危険な紛争地帯や内戦地帯を訪れ、いま世界で何が起こっているのかを伝える人たち、戦場ジャーナリスト。

これまで数々の紛争地帯に足を運び、左目を失明した黒い眼帯がトレードマークの女流戦場ジャーナリストメリー・コルヴィン

これまで彼女が辿ってきた経験と彼女が遺した功績が描かれる。

 

さぁ『プライベートウォー』を観てみよう。

 

メリーコンヴィンってだれ?

Marie Colvin who is war journalist

photographed by Don McCullin at her home in London in 2005

リー・コンヴィンは、湾岸戦争や東ティモール紛争など紛争地域を取材する戦場ジャーナリスト

2001年、政府軍と反政府軍(タミルイーラム解放のトラ)が衝突したスリランカ内戦に潜入中、流れ弾で飛んできたグレネードを被弾し、左目を失明する彼女。

左目を眼帯する独眼竜スタイルを貫き、数々の危険な取材を成功させてきた彼女の壮絶な人生を紐解く。

本作は2012年にシリアのホムスで彼女が殺害されるまでを描く伝記映画

 

cast of movie a private war

中央2人が本作のメインコンビ

メリーを演じた主人公は、『ゴーン・ガール』での怪演が話題になったロザムンド・パイク

彼女の怪演が絶賛され、76回ゴールデングローブ賞ドラマ部門主演女優賞ノミネートされた。

彼女の潜入取材に同行していた戦場カメラマンを演じたのが、『フィフティシェイズ』シリーズのイケメン俳優ジェイミー・ドーナン。

名脇役のスタンリー・トゥッチや、『ボヘミアンラプソディ』のトム・ホランダーらも共演。

 

メリー・ブレナーがVanity Fairに寄稿した『Marie Colvin’s a Private War』を原作に、メキシコのドラックマフィアを実態をカメラが追った『カルテルランド』のマシュー・ハイネマン監督が監督を務めた。

 

ISSが産声をあげる前夜

Rosamund Pike acting Marie Colvin and her cameraman

本作は、26年にわたって行われたスリランカ内戦、戦争によるPTSDシリア内戦の3つが主に描かれる。

冒頭10分で左目を失明し、そこから独眼竜スタイルが、彼女のトレードマークとなり、彼女を偉大なジャーナリストとして印象作る。

そんな輝かしい表舞台の裏側では、戦争での強烈な悪夢的な体験から長年にわたってPTSDに悩んだ彼女の姿も惜しみなく描かれる。

 

2010年初頭から始まったとされるシリア内戦にいち早く注目し、取材を行っていた彼女は、シリアのホムスで56年間の人生に幕を下ろした。

シリアのアサド大統領による独裁政治に反発した反政府軍が政府軍と衝突したことから始まったシリア内戦。

その反政府軍が拠点としていたホムスに滞在した彼女は、シリアでの出来事を記録し、メディアを通じて、シリアの実態を世界に発信していたのだ。

 

10年が経とうとするいまでも、解決の目処は立たず、ISS(イスラム国)の筆頭で世界をテロの恐怖に陥れてしまった。

政府VS反政府の構図だったのが、ISSなどの国際的なテロ組織が勢力を伸ばしたことでさらなる複雑な状況を生んでしまった。

そんな元凶ととも言うべき出来事をいち早く察知し、世界にその実態を伝えたメリー・コンヴィンの功績は輝かしい。

 

感想

Marie Colvin wirting it down what she felt somewhere from the scene of movie called A private War

世の中には本当に信じられない現実がありふれている。それを真に受けるほど、想像もできない光景が世界には広がっている。少なくとも日本にいると毎日生きてるのが当たり前だと勘違いするが、実際はそうではない。

寝ている寝室に爆弾が降ってくるかもしれないし、突然玄関窓が割られ、強行突破された挙句、家族が目の前で殺される、そんな状況ももはや偶像なんかではない。

明日生きているかわからない状況の中、生活をする人たちがいまなにを求めていて、なにが必要なのか?

たとえ自分とは関係がなくても、世界中のどこかで非人道なことが当然のように行われて、アリのように人が殺められる状況を見たまま世界に発信する、それが戦場ジャーナリストの仕事だ。

 

メリー・コンヴィンは自分の目が爆撃によって失明し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩みながらも戦場に帰っていくひとりの女の56年をたった2時間で本作は表現する。

爆弾があたりを飛びまわることが日常化した紛争地帯に潜入しては、そこの状況をメディアを通じて世界へ発信する。心を痛めるほどの衝撃やフィクションを疑うほどの壮絶な現実、ありのままを映像にし、自分がみた生の世界をそのまま体現しようとする。

本作で描かれる戦争の映像は、かなりショッキングで印象的なものばかりだ。戦車に常に乗っているような緊張感と車体が砂利道で揺れる不安定さが、本編の雰囲気を形作り、不穏な空気が本作全体を覆う。

 

戦争は残酷だ。

綺麗事だけで成り立たない現実世界だからこそ、本作を観ると、一層戦争の無意味さと色んな感情が入り乱れる複雑な感情を持つ。

世界のどこかで起きているある事実を、世界の人々に伝えようとする人間は、左目を失明するほどの代償を負い、追い討ちをかけるようにPTSDに苦しむ

戦争を扱った社会派映画のほとんどが扱う戦争の壮絶さとその痛みや苦い記憶を塗り超えるほどのPTSDに悩まされるなど、戦争経験者への当てつけは終わらない。

 

数年前にシリアで取材をしていたジャーナリストの安田純平さんが日本に帰国したとき、ネット上では日本の税金使うなとか、自分で勝手に言ったんだから自己責任だろ?という心無い言葉が生き生きとネット上に書き込まれていたことを思い出す。

日本にいるだけでは報道されにくい事実を世界に発信するために、自らの命を危険に晒した人物を徹底的に叩く日本と、同じタイミングで釈放され、祖国から賞賛されたフランス人ジャーナリストとの対応の差は驚きを隠せない。

ただでさえ英語が読めず、国際社会から完全に置いてきぼりなっている日本人がシリアなどの危険な地域の情報をどうやって得る?

英語で情報収集ができず、日本語だけの情報しか頼りにできない日本人が、日本のジャーナリストを叩く論理が全く理解できない。

 

世界で一番安全だと信じている日本にとって、他の問題が散在しているのに、危険な国にわざわざ行くジャーナリストなんて(笑)といった感覚だろうが、これらはシリアだけの問題ではなくなってくる。

シリア内戦が長引いたせいでどちらににも属さないテロ集団が力をメキメキとつけていき、ISS(イスラム国)に感化された世界中の若者が各地でテロを起こすようになり、私たちの生活は脅かされている。

日本でも北海道に住む大学生がイスラム国に渡航しとうとし、逮捕された事件は記憶に新しいが、ヨーロッパではイスラム国の過激な考えに感化され、自国でテロが起こす人間が後を絶たない。

世界がこれほどフラット化した21世紀において、「知らない」は言い訳にはならない。日本から遠く離れたシリア国境付近でイスラム国が国家宣言しようと、アメリカのどこかで常に銃乱射事件が起きようと日本人には関係ない。

たとえ日本と直接関係のないことでも、これほど世界が蜜に繋がった環境では、間接的に莫大な被害を被るときがある。シリア内戦の重要性をいち早く説いたメリー・コルヴィンはシリアで帰らぬ人となってしまったが、彼女が人生を通して訴えたことが、世界を動かしたのか?

世界はシリアの内戦に目をあまり配らなかったのもあり、結果的に世界中を恐怖で覆うほどの巨大な組織イスラム国の建国を許してしまったし、彼らの暴走によって多くの尊い命が無残にも失われることとなってしまった。

シリア内戦によって500,000以上のシリア人が亡くなっている。本作の幕が閉じると同時に衝撃的な数字を私たちは目の当たりにするが、これは世界で起こっている出来事の中でもほんの一握りだ。

本作は、彼女の人生を通して、戦場ジャーナリストの有意性となぜ関係のない日本が世界で起こっていること理解しないといけないのか改めて考えるいい機会となった。本作は映画を通して彼女の人生や当時の世界状況など多くのことを情報として与えてくれる。

本作は、PTSDや戦争の悲劇など、一般的な多くの戦争映画が訴える重要なテーマを同じように扱っているも、 他の戦争映画を超えるインパクトやプラスアルファのテーマを見出すことに少し欠けているように感じられる。

 

びぇ!