Movie Magic

アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

イラン映画『友達のうちはどこ?』感想ネタバレ:6歳の男の子が宿題を返すためにいざ冒険へ出る

f:id:shygon:20190212141455j:plain

EUROSPACE

こんちくわ!Shygonです!

今回はコケール・トリロジーの第1作目イラン映画

友達のうちはどこ?

について熱く語りたいと思います!

1987年製作の本作は、イランを象徴する映画監督アッバス・キアロスタミの作品です。

キアロスタミ監督は「桃色の味」でパルム・ドールに輝いた世界的に有名な巨匠。

 

あらすじ

f:id:shygon:20190212141610j:plain

EUROSPACE

「友達のうちはどこ?( خانه دوست کجاست )」

イランのカスピ海の小さい村コケールに住む小学2年生のアハマッドくんは学校にしっかり通う可愛い男の子。

クラスの友達の宿題を間違えて持って帰ってきてしまったアハマッドくんは焦り始める。

宿題を忘れると激怒する先生に怯えるアハマッドくんは友達マネツァザくんにノートを返そうとする。

マネツァザくんが住んでいる隣町ポテシュにノートを返すため、お母さんに止められるもひとりで冒険に出ます。

峠を越えて隣接するポテシュ村。

さあ、いざ冒険に出発だ!!!

 

本作の感想や解説のみを知りたい方は イラン映画を読む。 のセクションを読み飛ばして下さい。

 

イラン映画を読む。

日本から遠く離れた国イラン。日本と程遠く世界を牽引するような巨大な国ではないので、どんな国なのか想像しにいくと思います。

長らく続く中東問題の影響からイランは危ない国だと思われがちです。隣国アフガニスタンの影響で場所によっては危ない場所もありますが、若干の注意レベルが引かれている程度です。

そんな日本とはあまり馴染みのない国イランの人々は一体どんな生活をしているのか?

 

イランを代表する巨匠アッバス・キアロスタミ監督はイランの日常を切り取り、一般の人々の生活を描くことに定評があります。

2016年に76歳で亡くなってしまいましたが、彼の作品はいまでも世界中に影響を与えています。日本の巨匠小津安二郎の影響を受けており、自身でも大ファンを公言しています。

小津安二郎の作品はこちら

www.shygon.com

 

6才の可愛い男の子の珍道中

 コケール・トリロジー

f:id:shygon:20190212141630j:plain

EUROSPACE

中央アジアと東ヨーロッパの境界にある世界最大

の湖カスピ海。ロシアをはじめとする国が隣接し、コケールとポテシュというイランの小さな街が舞台の本作。

本作「友達のうちはどこ?」、「そして人生はつづく」、「オリーブの林をぬけて」の3部作を「コケールトリロジー」と呼ぶ。

3作すべてがコケールを舞台にイランの人々の生活を断片的に描き、この3部作がアッバス・キアロスタミ監督の名が世界に知られるきっかけとなりました。

その第1作目の「友達のうちはどこ?」は6才の可愛い男の子がただただ宿題を友達に返すため、ひたすら街をさまよう映画です。

 

 6才の可愛い男の子の冒険備忘録

85分の本編に、言語はペルシャ語。全くなにを言っているかわからないが、その魅力はひしひしと伝わってくる。

本作は85分ただひたすら宿題を返さなきゃと思い、街を駆け回る少年をカメラが追っかけただけです。人が死んだり、なにか事件が発生したりと映画の中での起承転結など一切ない。

イランの小さな村を舞台にひとりの男の子が走るシーンや小山をウロウロするシーン、友達ネマツァザはどこ?と街中の人に聞きまくるシーンのみ。

キアロスタミ監督が公言している通り、小津安二郎監督の影響をもろに受けているようなだんまりした穏やかなイランの日常を切り取っただけの映画になっている。

そんな一見つまらなそうな映画でも、観客を飽きさせないような仕組みが散りばめられており、楽しむことができた。

劇中で鳴り響くアラブ系の民族音楽がさらなる色を引き出し、映画を盛り上げる。小津安二郎の作品が好きなのであれば、好きになる映画だと思う。

小津安二郎監督自体も彼のキャリアはこんな少年の珍道中から始まった。1932年に製作された「大人の見る繪本生まれて見たけれども」は兄弟の子供の目線から日本の日常的な生活を映し出す。

www.shygon.com

監督が名言していなかったので、実際にはわかりませんが、大人の見る繪本生まれて見たけれどを意識して製作しているのかなと若干思いました。

f:id:shygon:20190212141650j:plain

EUROSPACE

85分ただひたすら町の往復を繰り返すアハマッドくん。通りかかるたびに大人たちに話しかけられ、そんな遠くにひとりで行くんじゃない!やめろ!と止められる。

本作は6歳の幼い男の子気持ちを代弁して描いたことから、イギリスの映画協会が選ぶ「14歳までに見ておきたい50の映画」に選出されるほど、子供の読む童話のようにストーリがあり、独特の世界観があるのだ。

 

通りかかるたびに大人たちにダル絡みされる無邪気な少年。

"大人の言うことは聞け"

この言葉が繰り返し出てくる本作。世界中の子供たちにそんなメッセージを本作は発信しているように思えるのである。

 

びぇ!