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アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

韓国映画『グエムル漢江の怪物』あらすじ感想:娘を想う父親と怪獣が社会に訴えかける

poster of korean movie The Host

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韓国を代表するポン・ジュノ監督の名を国内外に知らしめた名作『グエムル~漢江の怪物~(괴물)』
2006年に公開された本作は、韓国でのべ1300万人を動員し、歴代観客動員数第4位を記録した。
韓国映画界きっての怪獣マニアで、2017年に物議を醸した『オクジャ/Okja』 でも巨大なブタ怪獣をCGで描き切った。
 
2003年公開の彼の代表作のひとつ『殺人の追憶』では、怪獣が出てこないも、情が一切ない冷酷な殺人鬼のお話で、彼の作品では一貫して人間離れした怪獣/人間についてよく扱われる。
 

怪獣グエムルに踊らされる

one strange monster is on the boat

カエルのようにピョンと
本作で暴れまわる漢江の怪物はを下水溝に構えた巣のようなものに、人間を集める。
目的は謎である上、アメリカと韓国両政府はサーズのような病原菌を持っていると警告し、徹底的に除菌活動を行う。
 
6億円もの予算を費やし、怪物の映像化に成功させた。リアリティーのある怪物の恐ろしさに、躍動感のある立ちまわり。
ゴジラにまで巨大化すると現実離れしてしまうため、数十メートル規模のトカゲのような風貌に、水耐性のついた魚介類要素が足されたような怪獣であった。
 
そんなSF感漂う本作の怪獣映画はただの娯楽映画ではない。
それが本作が世界的に評価された理由のひとつだ。
 
物語の冒頭シーンに、アメリカ人研究者と韓国人研究者の間で、漢江の川に猛毒を流してしまうという描写があった。
これはアメリカと韓国の間で実際に国際問題化した事実であり、それを風刺している。怪獣という現実離れした設定を組み込んで、間接的にアメリカ軍のことを痛烈に批判しているのだ。
アメリカだけでなく、韓国政府のずさんな対応や、娘を亡くした家族が泣き叫ぶ場面で、無神経に群がるメディアにも批判の刃を差す。
 

世界の怪獣マニア

one young girl and one old man and one guy with gold hair

主人公の中年金髪はやばい雰囲気漂う
日本人が怪獣と聞くと、一気に童話レベルの陳腐なSF物語を想像するが、世界的にみると怪獣ファンは多い。
 
「ゴジラ」は日本が世界に誇るSFキャラクターなのだ。
アメリカではいまだに「ゴジラ」を映画化するし、本作のポン・ジュノ監督も一貫して怪獣を介して社会的に風刺している。
社会への痛烈な風刺をするのに怪獣という現実とは真逆の方向に位置するものを合わせて描くと絶妙に相性がいい。
 
ポン・ジュノ監督を"韓国の怪獣マニア”と呼ぶなら、「シェイプオブウォーター」などで知られるギレルモ・デル・トロ監督は"メキシコの怪獣マニア"と言える。
「シェイプオブウォーター」は怪獣映画史上初のアカデミー作品賞に輝いた作品で、"怪獣映画界"に大きな布石を残した。
 
本作も表面上は、目の不自由な中年女性と未知の怪獣との恋愛映画であった。
ただ根底にあるのは、マイノリティーのコミュニティ(LGBTQ)の声を代弁した映画になっており、いまのアメリカのあり方について痛烈な風刺をするものであった。
喜劇のような構成に、常に観客の心を揺さぶる音楽。主演のソンガンホは韓国を代表する俳優だけあって安定の怪演を披露する。
 
「麻薬王」や「JSA」、「殺人の追憶」など韓国映画の黄金時代を牽引してきた個性派にしか託せない重要どころを見事やりきった。
他に日本語ペラペラで、「麻薬王」でソン・ガンホとも共演したペ・ジュナが弓の選手役を好演し、「サイボーグでも大丈夫」、「親切なクムジャさん」、「乾き」などのオ・ダルスも出演。
 
感動的なストーリーに、なぜか怪獣にも感情移入してしまうほど繊細に怪獣を描く。まるで怪獣にも感情が存在し、人間のように意思疎通ができるみたく。
それほど各登場人物に共感できる要素を表現し、情緒溢れる作品にまとまっている。最後の戦闘シーンでは、まるでオーケストラを聴いてるかのように壮大に音楽要素を足して、戦いのクライマックスを演出する。
いかにも韓国映画といった感じだが、同じアジアの映画として、起承転結がはっきりした素晴らしい映画になっていたと思う。
 
びぇ!