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アメリカ在住大学生が映画を語るブログ

『全裸監督』からわかる日本メディアの闇に憤りを感じる

 

one guy and a lot of ladies aroud there drinking in the club from the scene of tv show naked director

©Netflix

 

山田孝之主演で80年代を舞台にアダルト業界の裏側がNetflixにて配信された。キャストがあまりにも豪華で、広告に頼らないNetflixだからこそ実現できるちょっと不思議な題材であった。誰もが知る輝かしい偉人の伝記ドラマではなく、前科7回に借金を50億抱えた男の謎を紐解く。

 

日本のアダルト業界の映像化ほど強烈な印象を与え、一度きくと忘れない衝撃とちょっとした興味を沸かせる題材は他にない。おそらく男性なら余計興味が湧くであろう。今回のドラマのモデルになった村西とおるは、別名”昭和最後のエロ事師”と呼ばれ、自身がビデオに出演し、自ら監督する二刀流。

 

僕は90年代後半に生まれたので、当然彼の存在はそれまで知らず、はじめてこのドラマで知った。主に80年後半に世間を沸かせた人物らしく、彼のおかげで脚光を浴びたAV女優黒木香さんは「脇毛を生やすスタイル」で世間を賑わせた。

そんな王道な日本の歴史とはズレた、世間体的によろしくない歴史の闇に埋もれた”別の歴史”をNetflixが企画化し、豪華キャストを揃えて映像化に至った。年間2兆円もの莫大な資金を背景に広告に頼らないビジネスモデルだからこそ実現ができたのだと思う。

広告に頼るとこんなふざけた企画に広告主はお金を払わないし、資本金がある程度確保できないと陳腐なAVビデオ化してしまう。この企画には勿体無いほど豪華キャストが脇に揃っているし、一流の俳優が集まったからこそアダルトビデオではないアダルトビデオの歴史としてその世界観に入り込めたものひとつの事実。

 

主演の山田孝之は日本では知らない人のいない国民的な俳優だし、メインキャストの満島慎之介や玉山鉄二も知名度的にも申し分がない。さらに圧倒されるのが、脇役の豪華さ。これほどアツい層を集めてきてドラマをできるのは、日本でNetflixくらいであろう。

國村隼やリリー・フランキー、石橋凌などの「いるだけでドラマが成立する俳優」に、話題のピエール瀧も含めてとにかく有名どころをかき集めたアベンジャーズ感。こちらの記事によると、演出を務めた武正晴さんは日本映画の黄金時代を彷彿させると、声を漏らしていたらしい。

最近の人気原作をベースに安パイ映画の量産しかしない日本映画の現状を考えると、本作がいかに話題性・背景を含めて重要な作品になるのかがよくわかる。製作費を抑えるため映画製作の勝負ができない、そんな背景から守りの映画製作になってしまっている普段の日本映画よりは格段に興味が湧く。

 

そしてこの題材がまたトリッキーなのが、一層一部の強烈なファンを囲い込むことに一役かっていて、戦略として上手いなぁと正直に思う。過度な言い方をして、先進国で平成の30年で唯一後退した日本にはもう世界に胸を張れる産業がないが、アダルト業界だけはいまだに日本が世界に誇る唯一の産業なのかもしれない。(アニメや化学産業など世界を牽引する産業は他にもあるが、今回は割愛)

 

アメリカに住んでいる僕のまわりで日本のAVを観て育つ友達は多い。それがアジア人であれば特にそうであり、彼らは日々ワケのわからない言語のアダルトビデオをみて思春期を過ごす。なのでジョークで日本語の喘ぎ声やそれらのマネをされたときは、日本人として正直戸惑いを隠せない。

 

モデルになった村西とおるさんのTwitterのツイートで快進撃を続ける中国企業と日本が遅れを取っている事実にAV業界の躍進を重ねて綴っているが、まさにそうなのかもしれない。

 

 

全裸監督がどんなドラマなのかは本ブログにて解説したので、興味がある方はこちらを観てください。

 

各話のあらすじと感想はこちら

この記事で言及したいのは、全裸監督がいかに面白いドラマなのかではない。

 

村西とおるさんは、このドラマのキーマンであるAV女優の黒木香さんと愛人関係であったらしい。そして給料の未払いで破局し、その後黒木香さんはそれが原因で自殺未遂までしていると。どこまでが真実なのかはわからないが、このドラマの背景にはどんでもない闇が潜んでいるということだ。

事実としていえるのは、未成年の女性をAVに出演させて(女性側にハメられたという意見もあるが)、逮捕されている過去があったり、とにかく色んな事件を起こしている人物で、ハワイでは370年の懲役判決まででている。

このドラマを見る限り、村西とおるの激動の人生を面白おかしく、メッセージ性のあるドラマに仕上げているが、事実はそんなクリーンなものではない。

 

ハーベイ・ワインスタインの長年のセクハラ騒動によって、アメリカでは#Metoo運動が盛んになり、数々の往年スターがハリウッドから締め出される結果になった。代表的な例のケヴィン・スペイシーは男児に性虐待したとして完全に干され、ウッディ・アレン監督も養女への虐待疑惑で、30年以上毎年映画を製作していたが、打ち切りを余儀なくされた。往年のスーパースター マイケル・ジャクソンでさえ死後に生前から絶えなかった性虐待の噂を告発するドラマまで製作され、彼の功績を見直す騒動になっている。

 

長年虐げられきた女性の権利がやっと認められ、いくら素晴らしい監督や俳優でも、有無言わず批判された。ハリウッドでは大きな騒動になったが、日本は?というと全くそんなことを聞かない。でもないワケがなくてまだ権力による暴力が表に出ていないのだろう。

最近亡くなったジャニーズの社長ジャニーさんは生前に性的虐待疑惑が後を絶たなかったのに、メディアでは彼の功績をひっきりなしに褒め、彼の事件については誰ひとり言及さえしなかった。日本がどれほど恐ろしい国であるか。

 

今回の村西とおるさんの件も、あれほど事件を起こして、アメリカではそんな人間にはかなりの締め出しが行われたのに、呑気にアダルト業界の異端児!とみんなで賞賛して、手をパチパチ。この世の中でよくこんな人間を英雄視できるのかが全く理解できない。

おそらくシーズン2を見据えての終わり方だったので、これからこのドラマがどう展開されていくのかはわからないが、『全裸監督』の記事をざっと見てもメディアで彼のことを批判するような文面は見つからなかった。

日本の報道の自由度はG7で最下位の67位であり、それほどメディアの統制は続いているし、本作へのメディアやNetflixの行動には失望している。

 

いつになったら事態が変わっていくのか。

 

まだまだ先な話だろうな

 

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