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映画「ブラッククランズマン」感想ネタバレなし:KKKに潜入した黒人警官の実話をスパイクリー監督が映画化

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Focus Pictures

こんちくわ!Shygonです!

今回はスパイクリーお得意の風刺劇

ブラッククランズマン

について語りたいと思います。

2018年に公開した本作はカンヌ映画祭で審査特別グランプリを受賞しました。白人至上主義団体KKKに侵入した黒人警官の実話です。

第91回アカデミー賞では、スパイク・リー監督が脚本賞を受賞しました。

 

サクッとあらすじ

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Focus Pictures

1970年代のアメリカ。中部に位置するコロラド州コロラドスプリングスで働く黒人警官ロン・ストールワースはある日 広告を見つける。

それはクー・クラックス・クラン(通称KKK)の募集についてのもので、当時アメリカ全土で急激に支持を伸ばしていた過激な白人至上主義の団体であった。

アメリカ各地で黒人が被害を受ける事件が多発しており、それに対抗するように黒人たちも学生の間から徐々に黒豹党(通称ブラックパンサー)が急激に拡大していた。

陽気なロンは興味本位でKKKに電話をし、身を偽って潜入することを決める。

しかし、黒人を嫌う彼らに会うには黒人である彼には不可能なことであり、同僚のユダヤ人警官フィリップが潜入することなった。

電話応答では黒人のロンが対応し、実際に会うのはフィリップであった。

一見この馬鹿げた計画はついに最高幹部までを騙す壮大な計画になるのであった!?

 

スパイク・リー軍団一覧はこちら

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 ロン・ストールワース

主人公の黒人警官。ロバート・レッドフォードの引退作「さらば愛しきアウトロー」にも出演していたジョン・デビット・ワシントンが演じました。

彼は「イコライザー」「トレーニングデイ」で有名なデンゼル・ワシントンの息子でもあります。

 フィリップ

ロンの同僚のユダヤ系警官。「スターウォーズ」シリーズのカイロ・レン役のアダム・ドライバーが演じます。呑気でマイペースな警官。

 スパイク・リー&その他

監督&共同脚本はスパイク・リーが務め、「ゲッドアウト」で売れっ子入りしたジョーダン・ピールが製作に加わっています。

 

ブラックジョークで社会風刺

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Focus Pictures

これまで「ドゥーザライトシング」「マルコムX」など毎作議論を呼び、自らが黒人であることを、映画を通して常に訴えてきたスパイク・リー監督が務めました。

ダークすぎるジョークがいつも人間の心情の痛いところをつくようなシーンで溢れかえっています。

彼の映画は大衆向けではなく、きっちりと起承転結が整っていないです。

淡々と物語が進むので若干眠気を誘いますが、総括して見ると、いかに黒人が社会の中で苦しめられて生き延びてきたかがよくわかる構造になっているのです。

 

作でも主人公のロン・ストールワースがその陽気な性格でKKK全体を翻弄し、騙す様が描かれますが、そこに隠れるアメリカの人種差別の闇が浮き彫りとなって表現され、見終わった後には本当に考えさせられる内容の濃い映画となっています。

しかし、実際のロン・ストールワースは自分が黒人として、黒人に攻撃的になる団体のふりをしていたのもあり、精神的にかなり追い込まれていたようです。

 

特に僕が個人的に好きな箇所は映画の録音が昔のフィルム時代の映画風で、本当に昔の映画を見ているかのようでした。

描かれた時代がちょうどその頃というのもあり、舞台がアメリカ中部なのもあり、フィルム時代の若干音が入り混じった仕様はとても魅力的でしたねぇ

 

本作を通じていまのアメリカをどう読むか?

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Focus Pictures

KKKはもともと18世紀にアメリカの秘密結社として、発足されました。発足当時は危険な思想がなかったものの、徐々に人種差別過激派となり、罪のない多くの黒人が殺されました。

一度勢いが収まるも、1915年公開の名作「國民の創生」で白人至上主義を支持する内容から支持者が一気に拡大し、再び暴走し出すのです。

ですが時代の流れと共に縮小していきました。2000年代に入ると最盛期の500分の1になるなどその勢いがなくなっていったのです。

 

かし、時代は急に変わるものです。

2017年トランプ大統領が発足すると事態は急変します。これまで縮小の一途をたどっていたKKKが再び吹き替えしてきたのです。

そんな時代の逆戻りにスパイク・リー監督は危機感を覚え、再び警鐘を鳴らしているのです。

本編が終わると、ここ最近のアメリカでなにが起こっているのかを振り返る衝撃的なニュースが次々と差し込まれます。

 

トランプ大統領に反対するデモ活動をする場所にドランプサポーターが車で突っ込み、妨害する映画のような場面。

画面は切り替わり、そのような出来事が各地で広がっているのに対し、トランプ大統領が演説を始めます。

 

「どっちも責めることなんてできない。」

 

????もう頭に大きな疑問が生まれます。

ただデモ活動してる人間たちに、妨害するために車で突っ込み死者まで出す事件が全米各地で広がってるのにどっちも責めれない????

 

スパイク・リー監督は言います。

んな理解のできない世の中が普通に存在している。

そんな状況を映画をみて歴史として勉強する。

するとそれは過去の出来事なんかじゃない。

まさにいま起こっている出来事なのである。

 

そんな彼の力強いメッセージがこの映画にはあるのです。

アメリカンファースト!と叫ぶシーン、白人のスタッフは喜び、黒人の淡々とした顔。いまのトランプ政権そのものを風刺しているのです。

そして、僕からしたら信じられないシーンが最後に流れます。KKKの最高幹部をやっていたデビット・ディュークが再び表舞台に姿を現し、支持者を集めているということです。

 

彼は直接的には大量の黒人が殺されたことに関与はしていないものの、彼の務める集団の支持者が昔もいまも騒ぎを起こしているのに、まだのおのおと白人史上主義を起こしているという事実。

本当に色んな目を背けたくなるような出来事を直視してしまう映画。

それが「ブラッククランズマン」

びぇ!

 

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